AmpC-E , CRAB , S.maltophilia感染症のガイダンス2021/12

Infectious Diseases Society of America Guidance on the Treatment of AmpC β-lactamase-Producing Enterobacterales, Carbapenem-Resistant Acinetobacter baumannii, and Stenotrophomonas maltophilia Infections

Clinical Infectious Diseases, 2021;, ciab1013

https://doi.org/10.1093/cid/ciab1013

 

IDSAから

AmpC β-lactamase-producing Enterobacterales (AmpC-E)

carbapenem-resistant  Acinetobacter baumannii (CRAB)

Stenotrophomonas maltophilia infection

の治療に関するガイダンスがでています。

Empiric treatmentに関しては

  • 6か月以内に上記の菌が当該患者から検出されているか?
  • 疑われている原因微生物のその場所での感受性は?
  • 30日以内の抗菌薬曝露歴は?

 

CRABとS.maltophiliaに関しては感染と保菌を分けて考えるのが非常に重要

基本的にはEmpiric treatmentの段階ではCRABやS.maltophiliaをカバーする必要はない。

カバーする場合はその患者のリスクベネフィットを慎重に考えて抗菌薬を選択する。

 

AmpC-Eに関して

AmpC産生菌に対しては感受性試験でSが出ていてもセフトリアキソンやセフタジヂムは無効となる

 

Q1 どの腸内細菌がAmpC産生のリスクが高いか?

A Enterobacter cloacae, Klebsiella aerogenes, Citrobacter freundiiが中~高リスク

これらの菌がセフトリアキソンに曝露すると8-40%でAmpC産生が起きセフトリアキソン耐性となる。これらの菌が培養から出たら感受性OKでもセフトリアキソンやセフタジヂムでの治療は推奨されない

 

Serratia marcescens, Morganella morganii, Providencia speciesがAmpC産生であることは5%未満でありこれらの菌が培養から出たら感受性試験に準じた治療でよい

 

 

Q2 AmpC産生リスクの高い菌による感染症の治療において気を付けるべきことは?

A いくつかのβラクタム系抗菌薬はAmpC誘導リスクが比較的高いため注意。

アミノペニシリン(アモキシシリン、アンピシリン)、第一世代セフェム、セファマイシン系はAmpC誘導リスクがある。

ピペラシリン、セフトリアキソン、セフタジヂム、アズトレオナムはAmpC誘導リスクは比較的低い。

イミペネムはAmpC誘導リスクがあるがAmpCβラクタマーゼの加水分解には耐える。エルタペネムやメロペネムも加水分解に耐えると考えられている。

セフェピムはAmpC誘導リスクが低くAmpCβラクタマーゼの加水分解に耐えるのでAmpC-Eの治療に効果的である。

キノロンやアミノグリコシド、ST合剤、テトラサイクリンはAmpC誘導せず加水分解されないので感受性Sなら使用してよい

 

 

Q3 AmpC-Eリスクが高い菌での治療薬はセフェピム?

A  E. cloacae, K. aerogenes, C. freundiiはAmpC産生菌であるリスク高い

セフェピムのMICが2mcg/mL以下ならセフェピムを、4mcg/mL以上ならカルバペネムで治療する。4-8mcg/mLの場合ESBL産生菌である可能性が高い。

 

 

Q4 AmpC-Eリスクが高い菌の治療におけるセフトリアキソンの役割は?

A  E. cloacae, K. aerogenes, C. freundiiの治療にセフトリアキソンを用いることは推奨されない。単純性膀胱炎の場合ならこれらの菌が出ていても使用してよいかもしれない。

 

 

Q5 AmpC-Eリスクが高い菌の治療におけるピペラシリンタゾバクタムの役割は?

A  E. cloacae, K. aerogenes, C. freundiiの治療にピペラシリンタゾバクタムを用いることは勧められない。タゾバクタムはAmpC加水分解の阻害効果はavibactam , relebactam , vaborbactamと比較し低い。

 

 

Q6  AmpC-Eリスクが高い菌の治療における新しいβラクタム/βラクタマーゼ阻害薬の役割は?

A  ceftazidime-avibactam, imipenem – cilastatin-relebactam, meropenem-vaborbactamなどの新しいβラクタム/βラクタマーゼ阻害薬が出ておりピペラシリンタゾバクタムよりもAmpC-Eに対する有効性はあるが、基本的にはカルバペネム耐性菌に対して使用したい。

 

 

Q7 AmpC-Eリスクが高い菌の治療における非βラクタム薬の役割は?

A ST合剤やキノロンは感受性があれば使用を考慮する。単純性のUTIではニトロフルイトランやアミノグリコシドも選択肢に挙がる。

 

Carbapenem-Resistant Acinetobacter baumannii(CRAB)

Q1 CRABによる感染症治療のアプローチは?

A CRABによる感染症で軽症であれば単剤治療(アンピシリンスルバクタム)、中等症~重症では最低でも2剤以上の併用療法が推奨される。

 

Q2 CRAB治療の併用療法の役割は?

中等症~重症では2剤併用療法を推奨する。骨髄炎のような治療期間が長くなる疾患では単剤にstep downすることを考慮する。

併用療法ではかなり広域にカバーされるためCDIリスクも高くなり、薬剤有害事象も考慮しなければならない。

 

Q3 CRABの治療におけるアンピシリンスルバクタムの役割は?

高用量のアンピシリンスルバクタムはCRAB治療において重要。感受性が判明していない段階や、併用療法の一部としても高用量のアンピシリンスルバクタムによる治療は考慮される。

high-dose sulbactam (total daily dosage of 24 g of ampicillin-sulbactam [4 g ampicillin and 2 g sulbactam q6h]など

 

Q4 CRAB治療におけるポリミキシンの役割は?

A ポリミキシンBは軽症のCRABなら単剤で、中等症~重症なら併用療法の一部として使用を考慮する。CRABによるUTIの場合コリスチンのほうがよい。

 

Q5 CRAB治療におけるテトラサイクリンの役割は?

A 軽症のCRABなら単剤で、中等症~重症なら併用療法の一部として使用を考慮する。

 

Q6 CRAB治療におけるメロペネムのextended-infusionは?

A 高用量の延長投与(8時間おきの投与なら4-8時間かけての持続静注)は中等症~重症のCRABでの使用を考慮する。

 

Q7 cefiderocolのCRAB治療における役割は?

A 基本的に使わない。使用する際は他の抗菌薬が効かない、使用できないときに限定するべきである。

 

Q8 リファマイシンのCRAB治療における役割は?

A 臨床研究が進んでないので現時点では使用しないこと

 

Q9 CRABによる肺炎での抗菌薬ネブライザー投与の役割は?

A 使用しない

 

 

Stenotrophomonas maltophilia

  1. maltophilia感染症のマネジメントはCRABの治療に似る。

保菌と感染の鑑別が難しく、特に嚢胞性繊維症や人工呼吸器使用などでは判断に迷う。

また、S. maltophiliaは抗菌剤耐性遺伝子や遺伝子変異の数が非常に多いため、治療法の選択に支障をきたす。

S.maltophiliaに“感受性試験で”有効と考えられている抗菌薬は

TMP-SMX

ticarcillin-clavulanate 毒性のため使われない

ceftazidime βラクタマーゼにより効かない

cefiderocol

levofloxacin

minocycline

chloramphenicol 毒性のため使われない

 

Q1 S.maltophilia感染症の治療のアプローチは?

A 軽症であればST合剤、ミノサイクリン、チゲサイクリン、レボフロキサシン、cefiderocolのどれか単剤で治療。ST合剤かミノサイクリンがよりベターである。セフタジヂムはS.maltophiliaがβラクタマーゼを産生するため重症度に関わらず使用してはいけない。

併用療法ではST合剤+ミノサイクリンがベター。ST合剤単剤で治療反応性が悪い時は他の薬剤に変更を検討。どの薬剤も使えない状況ではceftazidime-avibactamとaztreonamの併用療法を考慮する。

 

Q2  S.maltophilia感染症におけるST合剤の役割は?

A 軽症であればST合剤単剤での治療が好ましい。中等症~重症であれば併用療法を考慮する。

 

Q3  S.maltophilia感染症におけるテトラサイクリンの役割は?

A 高用量テトラサイクリン単剤療法は軽症のS.maltophilia感染症治療で考慮する。中等症~重症では併用療法を考慮する。

 

Q4  S.maltophilia感染症におけるフルオロキノロンの役割は?

レボフロキサシン単剤療法は軽症のS.maltophilia感染症治療で考慮する。中等症~重症では併用療法の中でも第二選択の位置づけで使用する(ST合剤単剤と比較しST+キノロンの併用療法での優位性を示すエビデンスに乏しい)。

 

Q5  S.maltophilia感染症におけるcefiderocolの役割は?

A cefiderocol単剤療法は軽症のS.maltophilia感染症治療での使用を考慮してもよい。中等症~重症では併用療法のセカンドラインとしての使用は考慮してもよい。

 

Q6  S.maltophilia感染症におけるceftazidime-avibactamと aztreonamの役割は?

A ST合剤やミノサイクリンが使用できない患者で、中等症~重症のS.maltophilia感染症の場合に使用を考慮する。

 

Q7  S.maltophilia感染症におけるセフタジヂムの役割は?

A  S. maltophiliaにはβ-ラクタマーゼ遺伝子があり、セフタジヂムを不活性化することが予想されるため、S. maltophilia感染症の治療には使用しない