ブドウ膜炎+髄膜脳炎の鑑別

 

N Engl J Med 2020;383:1578-86.

DOI: 10.1056/NEJMcpc2004996

 

63歳男性 意識障害 頭痛 倦怠感 不明瞭な発語

診断:ボレリアBorrelia miyamotoi infectionによる髄膜脳炎

 

膜性腎症が基礎疾患にある63歳男性でリツキシマブやシクロホスファミドを投与されている。

痛みを伴う視力障碍、亜急性進行性の脳症、歩行障害で受診。

症状出現から3か月経過したところで医療機関受診しリンパ球優位の細胞数上昇(糖低下なし)がみられた。

入院して2度目の眼の診察では硝子体に細胞浮遊あり、広域抗菌薬投与(アシクロビル、セフトリアキソン、アンピシリン、バンコマイシン、チアミン)で症状は改善した。その間にANCAや

治療は上手くいったが診断は?という症例

 

髄膜脳炎は侵襲的検査を行っても原因が特定できるのは30-60%程度とされる

この患者の診断のポイントは

・ブドウ膜炎を伴う髄膜脳炎

・亜急性の認知機能低下

・抗菌薬投与で症状改善

 

非感染性

血管炎

CNS血管炎は再発性の表現型を取ることがあり、CSFでリンパ球優位の細胞数増多をきたす。EGPAやGPAが小動脈の血管炎では中枢神経合併症をきたす。

この患者ではANCA陰性でESRや補体の低下がみられなかった。またこの患者ではリツキシマブなどが投与されていた。リツキシマブはCNS血管炎の治療に用いられる薬剤であり、抗菌薬投与後速やかに症状改善している点なども含めらしさはない。

 

リンパ腫

中枢神経リンパ腫は非ホジキンリンパ腫の稀な節外病変。MRI所見が異なり、抗菌薬にも反応しない

 

 

感染性

抗菌薬投与に反応している点が感染性らしさを上げる。

この患者ではリツキシマブを投与されいてるが、リツキシマブはCD20に対する抗体薬のためB細胞数減少をきたす。IgGやIgMの抗体検査の解釈には注意すべきである。

 

アメリカ北東部ではウエストナイルウイルスやEastern equine脳炎がウイルス性脳炎をきたす微生物となる。

マダニ媒介ウイルスとしてはPowassan virusも米国に存在する。

 

この患者では抗真菌薬や抗寄生虫薬は使用せず改善しているため、真菌・寄生虫・アメーバによる髄膜脳炎は否定的。

 

治療可能な感染性の髄膜脳炎(+ブドウ膜炎)をきたす微生物は

HSV HSV-1,2核酸検査は特異度90%以上

VZV CSFのVZV核酸検査は感度は60%程度と低い。VZVの血清学的検査は脳梗塞や中枢神経血管障害のときに提出することがある

CMV

ヘルペス感染症による眼球合併症は汎ブドウ膜炎、網膜壊死、網膜動脈炎でありこの患者に網膜病変がない点はヘルペスによる髄膜脳炎の可能性を下げる。

 

ブドウ膜炎をきたす感染症

結核

非結核性抗酸菌症

T.whipplei

 

これらの微生物は今回投与された薬剤では治療できていないはず

 

 

スピロヘータ感染症もブドウ膜炎と髄膜脳炎をきたす

梅毒

レプトスピラ

一部のBorrelia

 

レプトスピラ感染症は急性期は特異性のない結膜炎をきたし、慢性期になるとブドウ膜炎や網膜炎をきたす。後期には脳炎をきたす。

 

Borrelia感染症にはセフトリアキソンを用いるためBorreliaだった可能性あり。

入院2日目に採取した髄液でglpQ(Borreliaの遺伝子)をPCR検査提出すると陽性だった。