大人のRSウイルス感染症

日本では冬に流行するイメージですが、最近小児のRSV感染症患者が多いように感じたので読みました。

 

成人のrespiratory syncytial virus RSV感染症

BMJ 2019;366:l5021

http://dx.doi.org/10.1136/bmj.l5021

 

RSV感染症

温暖な地域では冬に感染のピーク

熱帯地方では雨季にピークあり

 

RSVもインフルエンザと同様に1シーズンの間にAとBのどちらかの遺伝子型が流行する(地域によって差あり)。

 

RSVは小児、高齢者、免疫不全患者の死亡原因となる。

 

RSV感染症は

上気道炎

重症な下気道炎

背景疾患の増悪

などの表現型をもつ

 

高齢者のRSV感染症では14.5%が入院を要する

入院期間は6-8%程度で、入院になった場合の死亡率は6-8%

入院を要する成人のRSV感染症では10-31%がICUに入室し、3-17%が人工呼吸器を要する

インフルエンザ肺炎で死亡する成人のうち25%以上が実はRSV感染症が関わっているという報告もある。

 

RSV感染症の重症化リスク

・ダウン症候群

・化学療法

・膠原病での免疫抑制剤

・基礎疾患に肺疾患(特に喘息)や心疾患

・高齢

・フレイル

・長期療養型施設入所

・高地に住んでいる

 

 

RSVは鼻咽頭の分泌物を介して感染する。エアロゾル化はあまり重要ではない。

これらの分泌物が眼球や鼻、口の粘膜に触れることで感染する。

ウイルスは数時間程度なら手指やモノの上で安定し、汚染されたものに触れることでも感染を起こす。

 

RSV感染症が疑われる場合、入院を要する患者や症状のあるスタッフ、面会者はスクリーニングすることが推奨される。

 

 

RSVそれ自体は細胞障害性はなく、人間の気道表面にダメージを与えることで2次性の細菌感染症を起こしやすくなる。

樹状細胞から逃げ、免疫系から逃れるメカニズムをもっている。ウイルス量が増えると好中球性の炎症を上気道・下気道に起こす。

 

ウイルス量の多さは重症度と関連せず、ウイルス量の減少がゆっくりだったりウイルス曝露の機会が多いほど重症化との関連がある。

 

 

RSVの診断方法は

血清学的検査(ただし成人では感度特異度が低く役に立たない)

細胞培養(感度17-39%)

抗原・抗体検査(感度23-74%)

PCR(感度84-100%)

口腔からの咽頭ぬぐいより、鼻からの咽頭ぬぐいの方が感度が高くなる

 

 

症状

無症候の患者は5%程度とされる

上気道炎(鼻閉と鼻汁22-78% , 咽頭痛 16-64% )が3-5日続く

発熱は48-56%とあまり多くない

下気道症状を伴うと(咳嗽85-95%,),喘鳴(33-90%),呼吸困難(51-91%)

インフルエンザと比較すると鼻閉や湿性咳嗽,喘鳴がみられやすく、発熱の頻度は少ない

 

画像

CTでは肺結節影とGGOがみられる

 

 

入院を要する患者では

細菌感染症の合併は12.5-23.4%、ウイルス感染症合併は21.8%と多い

そのためRSV感染症と証明され、細菌の培養検査が陰性でも抗菌薬を投与されるケースが多い

インフルエンザに比べ抗菌薬の不適切投与が多い(RSV 77% VS Flu 69%)

 

 

COPDや喘息の増悪として受診する患者はRSVを念頭に置く

 

心血管系疾患が背景にあると心不全の急性増悪、不整脈、ACS、心筋炎などをきたしやすい。

 

RSVの流行期では、急性非代償性心不全で入院となる患者のうち5.4%がRSV陽性という報告もある。RSV陽性患者の方が死亡率も高い。

 

 

治療

基本的には対症療法(気管支拡張薬、酸素投与、輸液、抗炎症薬)

FDAはRSV感染予防にパリヴィズマブ、治療にエアロゾル化したリバビリンを認可している

ワクチン開発が行われているものの、実用化したワクチンはいまだ出ていない。