子癇前症 Pre-eclampsia

子癇前症

Pre-eclampsia: pathophysiology and clinical implications

BMJ 2019;366:l2381

doi: 10.1136/bmj.l2381

 

子癇についての記述は2400年前にヒポクラテスが記述している。

 

子癇前症の病態生理はあまり理解されておらず治療介入に関して遅れることがある。

現在では胎児ではなく胎盤が原因と分かっているため胎盤除去により改善する。

 

子癇前症は高血圧のなかった妊婦の、妊娠20週以降に起きた血圧140/90mmHg以上かつ以下の症状のうち1つ以上が当てはまるもので定義される

1)蛋白尿

2)肝障害、急性腎障害、神経障害(痙攣)、凝固障害

3)胎児発育不全、流産、早期産などの子宮胎盤の機能不全

 

以前はSevereやMildなどの重症度分類をされていたが、臨床的に危機的状況になる(前子癇含む妊娠高血圧症候群は妊娠中の死亡原因で最多)こともしばしばありInternational Society for the Study of Hypertension in Pregnancy (ISSHP)とAmerican College of Obstetricians and Gynaecologistsではもはや重症度は用いない方がよいことを推奨されている。

一方で妊娠のどのタイミングで起きたかを区別するのは重要で34週が区切りとなる。

 

 

子癇前症は米国では妊婦の4.6%に起こり、ベトナムでは0.4%と地域や人種により差がある(世界的には2-8%)。

子癇前症による死亡は妊娠中の死亡原因のうち30%を占める。妊娠中の女性の0.8%が子癇前症で亡くなる計算。

 

リスクファクターは

  • 慢性の高血圧
  • 抗リン脂質抗体症候群
  • SLE
  • 妊娠糖尿病
  • 慢性腎臓病
  • 多胎妊娠
  • 妊婦が40歳以上
  • 妊娠前BIMが30以上
  • 流産の既往
  • 妊娠前にBMIが増加
  • 前回の妊娠から5年以上経過している
  • 低学歴
  • 子癇前症の既往
  • 不妊治療
  • 胎盤剥離の既往
  • 胎児発育不全の既往

 

初回妊娠で起こる確率は4%未満、2回目以降は間を開けなければ2%未満となっていく。

子癇前症の既往があると再発リスクが高く1回でも経験していると15%が子癇前症をきたす。

 

胎児の性別もリスクであることがわかってきている。

子宮動脈のドップラーエコーでは男児を妊娠している方が血管抵抗が高いことが示されており、これが子癇前症の原因となっている可能性が示されている。

 

胎盤の役割

胎盤にある合胞体性栄養膜は酸化ストレスにさらされると炎症性サイトカインやエキソソーム、抗血管新生因子やCell free fetal DNAを妊婦側の循環に分泌する。これらの因子が子癇前症をきたす。つまりはストレスを受けた胎盤により分泌された物質により妊婦に悪影響がでている状態が子癇前症ともいえる。

 

 

スクリーニング

通常は子癇前症は無症状なので診断は難しい。

時に心窩部痛や頭痛、そしてHELLP症候群を起こす。

子癇前症は妊娠20週以前に起こることは稀であり、特に妊娠後期(28-40週)に起こりやすいため定期的に血圧測定を実施したり尿検査で蛋白尿がないかチェックするのが簡易で費用も安く済む。バイオマーカーもいくつか出ているがコマーシャルベースでは…

 

 

治療

予防に関しては健康的な食事や体重管理、適度な運動、そしてストレスを減らすことが簡単に取り組めるところ。

妊娠早期での165㎎以下のアスピリン内服は子癇前症発症を抑えることを示したメタアナリシスあり。近年では子癇前症のリスクがModerate~Highの患者ではアスピリン内服が推奨されている。

カルシウム摂取量が少ない患者では1日当たり1000-2000mgのカルシウムのサプリ内服が血圧を低下させ子癇前症のリスクを減らすことが示されている。

胎盤の酸化ストレスが発症に関与するため抗酸化ビタミン(C,E)の摂取が予防になりそうだが効果を示した研究はない。

 

発症してしまったら子癇前症は母体と胎児の両方に影響する疾患であるため適切な治療が必要である。

頭蓋内出血予防に降圧薬(第一選択はメチルドパ、ラベタロール、ヒドララジン、ニフェジピン)を使ったり、痙攣の治療ではマグネシウムを用いる。

 

34週以降の子癇前症を含む妊娠高血圧症候群は分娩が推奨されている(胎盤が原因であるため)