免疫不全者の肺病変+肝病変+全身性リンパ節腫脹の鑑別

再発性濾胞性リンパ腫をもつ48歳の男性
化学療法や造血幹細胞移植、その他免疫療法を行われてきたが再度発熱などの症状あり受診。
症状は発熱、上腹部痛、肝酵素上昇、肝腫大、肝結節性病変、全身性リンパ節腫大、肺炎

いくつかの症状はリンパ腫で説明できるがそうでないものもあり。

 

鑑別

免疫療法と免疫過剰刺激
BlinatumomabやPembrolizumabの使用者はirAEなどを起こしうる。
障害を受ける頻度の多い臓器は肺、皮膚、消化管である。その他臓器障害も起こしうるが治療開始から症状発現まで経過が5か月と長い。
上記免疫療法で副作用がではじめるのは週の単位であるため考えにくい。

 

Rituximabやその他免疫抑制薬
リツキシマブはCD20に対する抗体薬で、リツキシマブ関連感染症はリツキシマブ投与後3年が経過しても起こることがある。
リツキシマブ関連感染症はウイルス・真菌・マイコバクテリアなど。

 

細菌性感染症
様々な感染症が腹痛と肺炎をきたすが同時に起こすとなると鑑別は絞られる。
レジオネラは呼吸器・消化管症状をきたすが肝結節性病変は作らない。
動物曝露歴はないがブルセラやコクシエラは肺と肝臓病変をつくる。
バルトネラは肝臓病変をつくることがあるが肺病変は稀。

 

結核
肺結核と肺外結核の可能性はある。しかしながらこの患者は化学療法や免疫療法前に潜在性結核は除外されているので今回のケースでは結核は否定的である。

 

ウイルス感染症
EBV,CMV感染症はリンパ腫の患者でよく起こる。特に骨髄抑制をきたす薬剤使用で頻度が高い。どちらも肺病変、肝病変、リンパ節腫大をきたすが肝臓の結節性病変は説明がつかない。

 

トキソプラズマ
トキソプラズマは急性感染症のときは全身性のリンパ節腫脹や肺病変をつくるが肝病変は説明がつかない。

 

真菌感染症
リンパ腫がベースにあり、リツキシマブとステロイド投与を受けているこの患者は播種性の真菌感染症リスクが非常に高い。
肺炎、肝腫大、リンパ節腫大をきたす真菌感染症は
ヒストプラズマ 肺+リンパ節がメインで肝臓病変は少ない
カンジダ 肝脾に膿瘍をつくることが多い 肺炎は珍しい
クリプトコッカス 肺と中枢神経、皮膚、骨、前立腺 肝病変はCommonではないが報告はある

 

 

血液培養が採取され、グラム染色でYeastが観察された。その後C .neoformansと同定された。
血清クリプトコッカス抗原テストは1:1024(感度93-100%)

 

クリプトコッカス感染症は
・中枢神経感染症の合併の有無
・患者の免疫状態
・クリプトコッカスの菌種(C.gattiiは薬剤耐性がよくいる)

上記の状態であればアムホテリシン+フルシトシンで治療を行いたい。
今回の患者では肝機能低下や汎血球減少がありフルシトシンが相対禁忌となるが挿管後の髄液培養でもC.neoformansが検出されたためフルシトシンも組み合わせる方針となった。

 

この患者は12日以上菌血症の状態が続き、全身状態から緩和方針となり入院39日目に死亡した。