無痛性の大動脈解離

先日、右上肢の不快感と徐脈/低血圧で受診した患者がType Aの大動脈解離だったという経験をしました。

心電図異常がないにも関わらず徐脈だったのはなぜ?というクリニカルクエスチョンが湧き可能な範囲で調べてみました

ポイント
無痛性の大動脈解離はType Aに多い
男女比は有痛性を含む症例と変わらない
Type Aでは徐脈になる頻度は20%程度 右冠動脈や大動脈弓部のCarotid receptor刺激に起因すると考えられる

Carotid receptorは頸動脈だけでなく大動脈弓部にもあるため心電図変化やトロポニン上昇がなくても徐脈になっても良さそうかなと思いました。心機能問題ないのに血圧低下を呈するのもCarotid receptor stimulationで説明つきますね

 

Painless Aortic Dissection
Am J Med Sci. 2017 Nov;354(5):513-520.
doi: 10.1016/j.amjms.2016.11.005.

 

無痛性の大動脈解離のシステマティックレビュー
Pubmed+Google scholarで”painless , Aortic , Dissection”を検索し内容を吟味
症例数は87例

 

男性62%
平均年齢は64.8歳

 

解離のタイプは
Type A  88%
Type B  12%

 

背景疾患には
高血圧 64%
冠動脈疾患 12%
大動脈瘤 9%

 

症状は
左片麻痺 21%
右片麻痺 6%
呼吸困難 16%
両下肢の神経脱落症状 15%
意識障害 14%

徐脈 19%
頻脈 15%
正常脈 66%

血圧低下 29%
血圧高値 32%
正常血圧 39%

脈の左右差 29%

この文献では徐脈は右冠動脈の近位部に大動脈解離の病変があると右冠動脈のCarotid receptorが刺激されるためではないかと記載がありました。

Carotid receptorは頸動脈だけでなく大動脈弓部にもあるため心電図変化やトロポニン上昇がなくても徐脈になっても良さそうかなと思いました

この文献では心電図に関する記載はなかった、残念!

 

 

この文献で面白いのは無痛性の大動脈解離や心筋梗塞は女性に多いと教わってきましたが、無痛性の症例は有痛性を含む大動脈解離と男女比はほとんど変わりなかったです。

 

 

 

JAMAの文献は2000年と古いですが参考になりました。患者数は460例ほどです。

The International Registry of Acute Aortic Dissection(IRAD)

JAMA. 2000 Feb 16;283(7):897-903.

大動脈解離で心筋梗塞を示唆する心電図異常(ST上昇)がみられるのは3.2%で、Type A大動脈解離では頻度は4.8%になるそう(TypeBでも0.7%(1例のみ)でみられた。

心電図異常なし 31.3%
非特異的なST変化やT波の変化 41.4%
左室肥大所見 26.1%
虚血性変化 15.1%
過去の心筋梗塞を示唆する所見(Old Q wave) 7.7%
新規の心筋梗塞を示唆する所見(ST elevation) 3.2%

 

また“痛み”に関しては痛みの訴えがあった患者は95.5%、Type Aが93.8%、Type Bが98.3%とType Aのほうが前述の文献のように無痛性となる割合が多い。