ミネラルコルチコイド過剰の鑑別

これは面白かった

N Engl J Med 2020;383:1263-75.
DOI: 10.1056/NEJMcpc2002420

54歳男性 心肺停止
診断:偽性アルドステロン症による低カリウム血症
低カリウム血症による致死性不整脈

  • Key point
    ミネラルコルチコイド過剰が疑われる場合
    高レニン/高アルドステロン
    低レニン/高アルドステロン
    低レニン/低アルドステロン
    で鑑別を行う。
高レニン/高アルドステロン
レニン産生腫瘍
腎動脈狭窄症
腎血流が低下する病態(低心機能・循環血液量減少)
 
低レニン/高アルドステロン
副腎過形成
原発性アルドステロン症/Conn’s syndrome
異所性アルドステロン産生腫瘍
 
低レニン/低アルドステロン
Apparent Mineralocorticoid Excess syndrome
偽性アルドステロン症
リドル症候群

 

54歳男性が心室細動VFで心肺停止となり救急搬送された。
受診日の昼までは普段通りで特に体調不良はなかったが、昼食時に突然身体を震わせて意識を失った。

身体の震えはすぐに止まったが意識は戻らず、救急要請され心停止から4分でCPR開始された。
初期評価ではVFでありショックを行い、ナロキソン・アミオダロン・エピネフリンを投与された。
その後Wide QRSでHR 40台となり意識も戻ったがまたすぐに脈なしになった。

心肺停止から30分経過しMGHへ到着。

エンペリカルに(高Kに対して)塩化カルシウム、GI療法、炭酸水素Naを投与され、その他昇圧薬やロクロニウム+ケタミンの投与、経肛門的にアスピリンを投与され緊急気管挿管された。

来着から25分経過し血液検査の結果が返ってきた。

Sodium (mmol/liter) 149
Potassium (mmol/liter) 3.5
Chloride (mmol/liter) 96
Carbon dioxide (mmol/liter) 6
Urea nitrogen (mg/dl) 13
Plasma creatinine (mg/dl) 1.79 5
Glucose (mg/dl) 319
Lactate (mmol/liter) 26.3
Hemoglobin (g/dl) 13.8
Calcium (mg/dl) 15.6
Ionized calcium (mmol/liter) 1.26
Phosphorus (mg/dl) 10.7
Lactate dehydrogenase (U/liter) 744
Alanine aminotransferase (U/liter 74
Aspartate aminotransferase (U/liter) 102
N-terminal pro–B-type natriuretic peptide(pg/ml)1942
High-sensitivity troponin T (ng/liter) 1614
Creatine kinase (U/liter) 473
Creatine kinase MB (ng/ml) 0–6.9 149.7 338.0

pH 7.30–7.40 <6.77
Pco2 (mm Hg) 38–50 >152
Po2 (mm Hg) 35–50 43

心エコーは左室収縮はびまん性に低下していた。

自発的な循環は保たれており、昇圧薬などによりBP139/92 , HR 108に。いったん鎮静を止めて神経学的な評価を行うと患者は反応なく瞳孔不同がみられた。頭部CT撮影したが出血や粗大な梗塞、占拠性病変はみられなかった。

CAGへ出棟
明らかな狭窄所見はなかった。CAG中の血液検査でカリウムが2.0と著明に低下しており経胃、経静脈的にKが補正された。

その後ICUへ入室となり家族から病歴聴取
ICUでも低K血症は治療しているにも関わらず遷延した

 

 

鑑別

低K血症から鑑別
この患者では嘔吐・下痢・NGチューブ使用などKを腎以外から喪失するような病歴はなく、利尿薬も使っていないためミネラルコルチコイド過剰による低K血症が疑わしかった。

 

ミネラルコルチコイド過剰
アルドステロンとコルチゾルはミネラルコルチコイドレセプターに働き水とナトリウム、血圧、心血管系の調整を行っている。

ミネラルコルチコイド過剰が疑われる場合
高レニン/高アルドステロン
低レニン/高アルドステロン
低レニン/低アルドステロン
で鑑別を行う。

 

高レニン血症を起こす疾患
レニン産生腫瘍
腎動脈狭窄症
腎血流が低下する病態(低心機能・循環血液量減少)

 

低レニン/高アルドステロンを起こす疾患
副腎過形成
原発性アルドステロン症/Conn’s syndrome
異所性アルドステロン産生腫瘍

 

低レニン/低アルドステロン
Apparent Mineralocorticoid Excess syndrome
生理量のコルチゾールがミネラルコルチコイド受容体(MR)に結合することにより発症する疾患である。遺伝学的に11β hydroxysteroid dehydorgenase (HSD) type2遺伝子(HSD11B2)の異常によって発症する常染色体劣性遺伝病である。生理的な状態では腎臓遠位尿細管で11βHSD type 2によりコルチゾールは不活性型のコルチゾンに変換され、MRには結合できない。この疾患ではHSD11Bの異常によりコルチゾールを不活化できずMRに作用してしまうため見かけ上はアルドステロン症のような高血圧・低K血症をきたす。

 

偽性アルドステロン症
甘草とグリチルリチン酸
グリチルリチン酸の効果は上記のAMESと似たように、グリチルリチン酸が11β-HSD2を抑制するためコルチゾル作用増強される。
また、肝臓でのアルドステロン代謝を阻害する(5β‑reductaseと3β‑hydroxysteroid dehydrogenaseを阻害する)ため血中のアルドステロンが増加するためさらに心血管系への負担となってしまう(ただしあくまで抑制されている中で高めという程度、パターンとしては低レニン/低アルドステロンとなる)。

過去のNEJMの症例にも偽性アルドステロン症の症例があります。面白いのでご一読ください。
N Engl J Med . 1991 Oct 24;325(17):1223-7

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この患者は尿のK/Crレシオは230と増加しており腎性喪失と考えられた。

そしてレニンとアルドステロンを測定するとどちらも基準値を下回っていて低レニン/低アルドステロンの病態が考えられた。

 

この患者は入院前はあまり食事を取っておらず、代わりに大量の“飴”をなめていたという病歴あり、家族に持ってきてもらうと甘草入りの飴だったため偽性アルドステロン症による低カリウム血症の診断となった。

入院32時間で患者は死亡した。