高アンモニア血症の鑑別の仕方
見るべきポイントは
アシドーシス
ケトーシス
低血糖
低HCO3
これらがある場合、有機酸・カルニチン欠乏・ライ症候群・中毒・薬剤・肝臓が高アンモニア血症の原因と推察される
乳酸正常値、代謝性アシドーシス無しの場合は尿素サイクル異常・新生児の一過性高アンモニア血症が疑わしい
肝酵素上昇を伴う高アンモニア血症は肝毒性・ライ症候群・カルニチン欠乏が疑わしい
高アンモニア血症の鑑別
尿素サイクル異常
・アルギニンコハク酸尿症
・シトルリン血症
・カルバミルリン酸合成酵素欠損症
・オルニチン・トランスカルバミラーゼ欠損症
・アルギニン血症
有機酸血症
・プロピオン酸血症
・メチルマロン酸血症
・イソバレリン酸血症
・メープルシロップ尿症
・2塩基性アミノ酸尿症
・高アンモニア-高オルニチン-ホモシトルリン尿症
・新生児
薬剤
・サリチル酸
・カルバマゼピン
・バルプロ酸
・トピラマート
・トラネキサム酸
・化学療法(5FU , リツキシマブ)
機序不明
・低グリシン中毒
・妊娠
・遠位尿細管性アシドーシス
・カルニチン輸送体欠損症
・尿管拡張
・ライ症候群
高アンモニア血症まとめ
Pediatr Nephrol (2012) 27:207–222
DOI 10.1007/s00467-011-1838-5
アンモニアはアミノ酸合成の材料となる窒素として重要な物質
不要な窒素はアンモニア⇒尿素窒素に変換され腎臓から排泄される
運動時は骨格筋で筋の異化によりアンモニアが産生され、脳ではグルタミンデヒドロゲナーゼがアンモニア産生を誘発する。
体内で産生されたアンモニアは組織内でグルタミンに変換されるため通常は血中アンモニア濃度は低値(40mmol/L以下)である。
グルタミンは腎臓では排泄することもでき、腸管の細胞でエネルギー産生にも用いることができる(窒素⇒アラニン、シトルリン、アンモニアに変換)。
アンモニアは肝細胞で尿素サイクルに入るか、グルタミンに変換される。
アンモニアは高濃度になると毒性を示す。
グルタミンが脳に蓄積すると急激に脳浮腫を起こす。特に急性の高アンモニア血症に注意。
高アンモニア血症の症状は意識障害や痙攣、失調、食思不振や筋力低下などなど。特異的なものはないが羽ばたき振戦Asterixisは有名。羽ばたき振戦はその他の代謝産物が蓄積するような疾患でもみられる(尿毒症など)。
高アンモニア血症の急性期はタンパク摂取を中止する
炭水化物・脂質で十分なカロリー投与を行う(カロリー不足だと筋肉異化によりアンモニア産生が起こるため)。
ただし48時間以上のタンパク制限は2次性に窒素産生をきたしてしまう。
病初期は50%を必須アミノ酸の形で1.0-1.5g/kgのタンパク摂取を行う。
インスリン使用は同化を促進するため有用かもしれない。
アンモニア血中濃度が許容内まで低下してきたら経口摂取を再開しタンパク摂取を1日摂取量の半分(0.5g/kg)摂取させる。
アンモニアは低分子のため透析で効率的に除去することができる。
透析は急性の高アンモニア血症患者を改善させるエビデンスもある。
IHDとCHDの使い分けはアンモニアの血中濃度が高いうちはIHD(通常の血液透析、効率がよい)。透析を中断するとアンモニアのリバウンドが起こるためCHD(効率は悪いが24時間継続)を行う
能保護治療
まだエビデンスの示された治療はないもののいくつかの研究がある
NMDA受容体拮抗薬(メマンチン)…高アンモニア血症による脳症での死亡はNMDAの過活動に起因する。
NSAIDs+L-ornithine-L-aspartate(LOLA)は肝臓の尿素合成を刺激し骨格筋のグルタミン産生増加、アンモニア除去へつながる。
肝性脳症治療
誘因検索を行う(感染症、高たんぱく食、アグレッシブな利尿薬治療、消化管出血、便秘)
腸管安静をとり、腸管運動を抑えるような薬剤は中止する。
ラクツロースやネオマイシンは有用