感染性心内膜炎による筋骨格系症状と細菌尿

ある日のカンファレンス

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糖尿病を基礎疾患にもつ79歳男性
受診の4日前から大腿の筋痛が出現
2日前から両肩や上肢にも筋痛が広がり
痛みのため動けなくなり救急要請
発熱あり、身体診察では僧帽筋や三角筋に圧痛あり、痛みのため肩関節外転が全くできず、手関節も痛みのため動かせなかった。
血液検査では炎症反応マーカー上昇あり、CK上昇なし
尿検査では膿尿と細菌尿あり
尿検査をみて前立腺の触診を行ったところ圧痛あり
⇒初期診断はリウマチ性多発筋痛症+前立腺炎の診断で入院

 


 

当直医「という患者になります。」

Tommy(以下T)「肩関節はどれくらい動かせますか?」

当直医「全く外転できませんでした」

T「(経過や所見が前立腺炎とは違う気が…)TSSのときにおこるような感染症による筋痛症状ではないでしょうか?」

当直医「バイタルも良いですし症状はPMRらしさがあります」

 


入院9時間で血液培養から黄色ブドウ球菌が検出された。尿培養からも黄色ブドウ球菌が検出された。
感染性心内膜炎疑いとして精査することになった

ポイント

IEでは筋骨格系症状が40%以上出現する。PMRを想起したら合わせてIEの可能性を考慮する。

黄色ブドウ球菌(以下S aureus)による菌血症や感染性心内膜炎ではS aureusが尿培養で生えてくることが10%程度起こる。しかも腎膿瘍などの尿路感染症がなくても生えることがある。


 

関節の痛みをみたときは
そもそも関節の問題なのか、関節周囲の組織の問題なのか
を鑑別する必要があります

また関節の問題だと考えた場合
関節炎 Arthritis  or 関節痛 Arthralgia
というように炎症なのか、痛みのみなのかを分けて考えましょう。

 

肩関節の診察に関する非常によいSystematic Reviewがあります。ぜひご一読ください。

Does This PatientWith Shoulder Pain Have Rotator Cuff Disease?
The Rational Clinical Examination Systematic Review
JAMA. 2013;310(8):837-847.
doi:10.1001/jama.2013.276187

PMRでは肩峰下滑液包炎が起こりますが、肩峰下やローテーターカフの問題では下の画像のように手を下した状態から60°程度までは痛みはない、もしくは軽度です。

今回の患者では動かしはじめから痛いといっておりPMRによる肩の痛みらしさがありませんでした。

他動時よりも自動時で痛みが増悪する点が筋肉由来の痛みらしさがありました。
僧帽筋に把握痛がある点も筋由来であることを示唆します。

血液検査ではCK上昇はみられないため筋炎Myositisというよりは筋痛Myalgiaと捉えたほうがよさそうです。
手関節に関しては私が診察したときは軽度腫脹あり他動時痛でも痛みがひどく関節炎と捉えました。

 

筋骨格系の診察ではこの本が尤度比などまでついていてお勧めです。動画もあるので非常に参考になります。

 

IEに伴う筋骨格系症状に関してまとめた文献では下記のようにIEでは40%程度に何かしらの筋骨格系症状があると報告されています。

 

Rheumatic manifestations of infective endocarditis in non-addicts. A 12-year study.
Medicine (Baltimore). 2001 Jan;80(1):9-19.

 

PMRを診断するときはまずIEを否定しましょう!

 


では細菌尿に関してはどうでしょうか?

経験的に熱源不明の発熱で入院となったS aureus菌血症の患者では入院時の尿培養でS aureusが生えてくることがままあります。

 

古い文献ですがS aureus菌血症と尿からS aureusが検出された患者についてまとめた文献がありました。

The Association Between Staphylococcus aureus
Bacteremia and Bacteriuria
Am J Med. 1978 Aug;65(2):303-6.

S aureus菌血症+細菌尿があった患者は76人
48時間以内に培養が検出されたのは59人
ブドウ球菌が生えたのは16人(27%)
培養陰性は33人(56%)
その他の菌が生えたのは10人(17%)

 

S aureus菌血症についてもう少し詳しくみると
S aureus 菌血症でS aureusが尿培養で検出されたのは7%
S aureusによるIEでS aureusが尿培養で検出されたのは13%

 

また、S aureus菌血症で亡くなった患者で病理解剖を行い腎膿瘍の有無を確認すると
尿培養でS aureusが検出された患者のうち
2人が腎膿瘍あり、4人が腎膿瘍なし
尿培養陰性の患者では
4人が腎膿瘍あり、23人が腎膿瘍なし


いままで疑問だったS aureusが尿培養で生えることを調べるいい機会となりました。

再度まとめです

IEでは筋骨格系症状が40%以上出現する。PMRを想起したら合わせてIEの可能性を考慮する。

S aureusによる菌血症や感染性心内膜炎ではS aureusが尿培養で生えてくることが10%程度起こる。しかも腎膿瘍などの尿路感染症がなくても生えることがある。