視力障害の鑑別

N Engl J Med 2019;381:164-72.
DOI: 10.1056/NEJMcpc1900597

 

31歳女性 Vision loss
診断:Leber’s Hereditary Optic Neuropathy LHON

Key:視力障害ではまず病変の首座がどこにあるか神経所見で推察する。
痛みの有無・進行スピード・視力障害の程度などが鑑別に有用

3週間前に遠見でかすみ目が出現するようになり眼鏡を着用するようになった。
受診の1週間前に左目がほぼ完全に視力喪失した(視野の真ん中に暗い影ができた)
色調が抜け見えるものが灰色になった。
左目を隠すと右で見えるものは正常であった。
近医眼科では明らかな異常なくneuro-ophthalmologist診察の運びとなった

 

細隙灯顕微鏡での観察では異常なし
眼圧異常なし
眼底異常なし
眼球運動障害や眼振なし
左眼は直接・関節対光反射が消失している
造影MRI施行され、T2wで左視神経がやや造影効果あり
グルココルチコイドに反応しなかった

 

鑑別

視力障害の診察においてはまず解剖学的にどこに異常があるかを考える。

この患者の神経所見での特徴は対光反射消失である。
眼球自体(網膜や角膜・水晶体)の障害では直接対光反射は障害されるが間接対光反射は保たれる。
この患者では求心性・遠心性線維の障害が起こっており障害部位は網膜~視交叉の間と考えらえる。

視神経障害
視神経障害のテンポから鑑別を絞ることができる。
痛みなし
亜急性
片側性

慢性の視神経障害
悪性腫瘍
中毒
ビタミン欠乏

感染症
バルトネラ
結核
CMV
これらの疾患は視力障害を起こすが網膜障害である
その他に梅毒、ライム病、HIVも視神経障害をきたすがこの患者では陰性だった

 

片側性の視神経炎
多くの視神経炎の患者は眼球運動で痛みを訴える
視神経炎で眼球運動痛が出現するのは視神経鞘由来の痛みや外眼筋由来の痛みと考えられえている。

多発性硬化症
多発性硬化症の初期症状として視神経炎による視力障害が出現する。
視力障害の程度とステロイドへの反応不良がこの患者では合わない。
また頭部MRIではMSを示唆する所見なく髄液検査も異常なし。

 

Neuromyelitis optica NMO
20%の患者は両側性で急速性、再発性の視神経炎であり、MSの視神経炎より視力予後が悪い。
NMOではMRIで派手に所見がでることが多くこの患者では合わない。
またアクアポリン4抗体はNMO患者の80%で陽性となるがこの患者では陰性だった。

Myelin Oligodendrocyte Glycoprotein–Mediated Optic Neuritis
ミエリンオリゴデンドロサイトグリコプロテイン抗体により重症の視神経炎がおきる。
MRI所見は派手で、ステロイドが劇的に効くのがポイント

Paraneoplastic syndrome
パラネオ自体が珍しく、また視神経障害はさらに稀

サルコイドーシス
Systemic sarcoidosisでは25%の患者に視力異常が出現する。
多くの患者はブドウ膜炎だがときに片側性視神経炎を起こすこともある。
サルコイドーシスによる視神経炎は痛みは軽度で進行がゆっくりである。
ACE正常値は除外にはならない。
ステロイド反応性はまちまち
MRIでは視神経腫大などがみられるがこの患者はMRI所見が乏しい

Leber’s Hereditary Optic Neuropathy LHON
LHONは無痛性・亜急性・重症・片側性の視力障害をおこす。
視力障害は数週~数か月で進行していく
15-35歳で起こる 男子に多い
LHONはミトコンドリアDNAの遺伝性疾患であるが50%の患者は家族歴がない
炎症性疾患ではないためステロイドに反応せず、MRIでは急性期に視神経の高信号がみられる。
診断には遺伝子検査を行う。