溶血性貧血+血小板減少

N Engl J Med 2017;377:2074-83.
DOI: 10.1056/NEJMcpc1710565

 

30歳男性 倦怠感 発疹 貧血 血小板減少
診断:TMA(TTP)
mimicker:初回の血液像では破砕赤血球なし

今回の受診の3年前に交通事故に遭い、胸部や臍周囲に血腫ができ入院となった
初日の採血では19万あった血小板が2日目に2万まで下がっていった また、血尿も伴っていた
これらの所見は特に治療行わず経過観察で改善していった

今回は2週間前にマダニに咬まれてから、倦怠感・虚弱・労作時呼吸困難が出現するようになった

受診の5日前から発熱や盗汗も伴うようになり右膝周囲に紅斑が出現し受診となった
入院時の検査でマダニに咬まれたというエピソードからライム病が鑑別に挙がり血液検査でBorrelia burgdorferi抗体を調べると陽性だったため、Doxycycline,Clindamycin,quinineで治療開始した

その他の検査結果としては今回も血小板1万台と著明低値でHbも6-7g/dl、血尿もあった ハプトグロビンも著明に低下していた
初回の末梢血血液像では一部に破砕赤血球があったが1/hpf未満であった 赤血球の形態に異常はなかった

入院3日目に突然発症の失語や右片麻痺、意識障害が出現した

 

鑑別
急性発症の溶血性貧血、血小板減少、多彩な症状・腎障害・神経症状

感染症
膝の紅斑や発熱、倦怠感などの症状はBorrelia抗体陽性でありライム病の診断でよい
しかしライム病のみではSevere anemiaやThrombocytopeniaの説明がつかない

マラリア
溶血性貧血を引き起こす感染症としてはマラリアが世界的にcommon
潜伏期間は8-25日が多いがそれ以上のこともある(宿主の免疫機能の状態によりけり)
基本的にはマラリア流行地に3か月以内に渡航した発熱患者ではマラリアは鑑別に挙げるべきである
種類によって潜伏期間が大きく違い3-5年で発症することもままある
症状としては発熱・頭痛・虚弱・盗汗・不眠・関節痛・筋肉痛がでてくる 腹痛や下痢も10%程度の患者で訴える
身体診察では貧血による皮膚蒼白や脾腫を診る
診断は末梢血のギムザ染色で行うのが一般的 ギムザ染色の際に少し工夫・技術が必要(マンデル参照)
血症板も減少するが軽度である
この患者では渡航歴もなく血小板減少が高度である点や3年前にも同様の症状があったことがUnikely

Babesiosis
バベシア症はマダニを介した原虫感染症である 赤血球輸血でも感染するおそれもある
ヒトでは赤血球内に寄生し発熱と溶血性貧血を呈する
潜伏期間は1-6週間と幅があり(平均して37日)、発症から診断まで3-44日とこちらも幅がある(平均6日)
発熱や倦怠感、悪寒や盗汗・頭痛・筋肉痛・食思不振・乾性咳嗽・関節痛・嘔気などの症状が出現する
高熱であることが多く間欠的・持続的な40℃台の発熱が1つの特徴
身体診察では軽度の脾腫を触れるかもしれない
血液検査では溶血性貧血のパターンを呈し、直接クームス試験陽性となることがありAIHAとの鑑別が必要
血症板減少も特徴でありその他の発熱疾患との鑑別に有効
マラリアと同様に診断は末梢血のギムザ染色が有用であるが発症初期は陰性となりやすい
Severe babesiosisはimmunocompromised hostで起こるがこの患者はリスクファクターがないのがUnlikely

自己免疫疾患
Evans syndrome(AIHAに血小板減少を合併したもの)
パターンとしてはアリだが腎機能障害や神経症状の説明ができない
Evans syndromeでは半数にギムザ染色で球状赤血球をみとめる
腎炎や脳炎(中枢神経ループス)を合併したSLE  APS
自己免疫性疾患であり寛解や再燃はありうるが3年前に治療せず寛解し3年後に再燃するというのはUnlikely

微小血管障害 microangiopathy
微小血管障害による破砕赤血球を伴う溶血性貧血の原因にはSevere hypertension、DIC、Sepsis、Cancer,HUS,TTPなどがある
キニン起因性血栓性微小血管障害に関してはNEJMcpsAfter the Party’s Over参照
この患者では神経症状もともなっており2回目のエピソードはTTPが考えられた しかしTTPはレアな疾患であるし、末梢血像で破砕赤血球がないことから鑑別の上位に挙げづらかった

 

神経症状が出現した3日目に再度末梢血像を確認すると破砕赤血球Shistocyteが2-3/hpfでありTTPが最も考えられた
von willebrand factor(VWF)は血症板の接着と凝集(1次止血)に関わる蛋白で血管内皮や巨核球で産生される
産生された際は長い紐状で、この紐を切断するのがADAMST 13タンパク分解酵素である
TTPではこのADAMST 13proteaseに対する抗体ができることで巨大なVWFがそのまま血中で働き血栓を作り微小血管障害を引き起こす

TTPの診断にはADAMTS 13活性などの検査が有用だが結果がでるまでに時間がかかるので、TTPが疑われれる状況ではPLASMIC scoreをつけてみる

0-4はLow risk 0-4%
5はIntermediate 5-24%
6-7はHigh risk群 62-82%でADAMTS13活性の低下の可能性あり
血漿交換が標準的治療である RCTでも輸血よりも優れていることが判明している
抗体が原因であるのでリツキシマブが治療期間を短縮し再燃の頻度を減らすことがわかっている
この患者では1回目は交通外傷が誘因、2回目はライム病による炎症が誘因となりTTPを発症したと考えられた