神経根障害の鑑別

N Engl J Med 2018;379:1862-8.
DOI: 10.1056/NEJMcpc1810387

 

58歳女性 異常感覚 左足・腹壁の筋力低下
診断:ライム病による髄膜神経根症

 

10週前までは元気であったが両肩間の背部痛が出現 特に治療せず2週で改善
6週前から肩~乳房にかけての体幹の感覚低下あり
5週前から感覚低下が上腹部まで進んだ
腕で補助しなければ臥位から起き上がることができなくなった(腹筋筋力低下)。
4週前から左手の3,4,5指、右手の4,5指の異常痛覚が出現
MRI撮影を予定されたが、感覚低下が陰部まで下がってきて、排尿障害が出現するようになったため受診。

 

鑑別
神経学的異常をもつ徴候である可能性がある場合は神経診察で局在を特定する

徴候としては
体幹の感覚異常・筋力低下
この患者では左上腕二頭筋・両アキレス腱の腱反射低下
排尿障害

この患者でBeevor’s signについて触れられていないが恐らく経時的にはあったと考えられる。

Beevor’s signは胸髄レベルの神経根症を評価するための身体所見である。
腹直筋は肋間神経支配でT5-12と幅広い。
およそ臍部がT10に相当するため腹直筋を収縮させたときに臍が頭側へ動く場合、臍以下の筋力低下が示唆されるためT10-12に病変があると推定できる。

 

感覚障害がある点からはMyopathyは除外され、下位胸椎~上位腰椎の神経根症状により腹部所見がでていると考えられた。
深呼吸がしづらい症状は頚部や頚部神経根の症状ではなく肋間筋の症状と思われた。

腱反射亢進や強直性の麻痺がない点からは脊髄病変も否定的
筋力低下がある点から感覚のGanglion障害も否定的

⇒多発神経根障害

多発神経根障害の鑑別

糖尿病性
多発単神経障害
症状は末梢に出やすく体幹などに出ている点が合わない

炎症性多発神経炎
CIDPなどもLength dependantなため合わない

悪性腫瘍
Leptomeningeal carcinomatosis MRIで所見がなく進行がんのサインもない

神経サルコイドーシス
感覚神経根の病変をつくることがあるが、多いのは脳神経の症状で特に視神経に多い
その他のサルコイドーシス病変をつくることもあり

感染症
VZV
感覚障害と痛みが主だが、時々運動神経障害もきたす。
基本的には皮膚病変を伴うが、でないこともある。
この患者では症状が多巣性である点と皮膚病変がないことが合わない

ライム髄膜神経根炎Lyme meningoradiculitis
感染から2-18週で出現し、早期の播種性Phaseでは痛みと感覚低下、無反射性筋力低下が起こる。患者の半数は顔面神経麻痺の症状がでる。
この患者ではライム病がEndemicな地域に住んでおり、受診の3週間前に小さい痛みとかゆみを伴わない紅斑⇒遊走性紅斑があった。

またこの紅斑は左の臀部にあった。マダニ咬傷の起きやすい部位である。
マダニにかまれやすい部位は
腋窩
生え際
下腹部
ベルトライン

抗体検査で確定診断となりCTRX3週間で治療された