腹水・門脈圧亢進症の鑑別

N Engl J Med 2016;374:873-8.
DOI: 10.1056/NEJMcps1405984

 

54歳男性 1か月前からの浮腫と1週間前からの腹痛で来院
腹痛は帯状で上腹部にあり食事で増悪あり 嘔気や嘔吐が1日前から出現したためED受診 特に基礎疾患は指摘されておらずProbioticsとVitamin (100IU/d)Aの摂取のみだった。

身体診察では腹水の存在を示唆する所見あり その他肝硬変やJVDなど心不全を示唆する所見はなかった

血液検査ではNa 127mEq/L,K 4.2mEq/L,Cl 90mEq/L,HCO3 30mmol/L,AST,ALTの軽度上昇とPLT 10.6*10^4/mcLと軽度減少があった
尿検査ではタンパク尿含め異常なし

HCV抗体陽性だがViral load検出感度未満だった  HIV,HAV,HBVは陰性
腹部CTでは肝臓や脾臓に異常はなく、大量の腹水があるのみだった。

 

鑑別

腹水が診断の鍵になりうる
腹水の評価としては細胞数と分画、腹水蛋白,Alb、血漿-腹水Albmingradient(SAAG)

穿刺し2Lもの腹水がひけ、SAAGは2.7、腹水蛋白は1.5g/dL、細胞はみとめず培養も陰性、病理学的に悪性細胞みとめず
低Na食とフロセミド+スピロノラクトンで治療行い退院した

SAAG 1.1g/dL以上は門脈圧亢進症が考えらえる
SAAG高値になる疾患としては心不全、Budd-Chiari syndrome、粘液水腫がある(心不全と粘液水腫では腹水蛋白は高値2.5g/dLとなることが多い)

フェリチンやセルロプラスミン、抗核抗体や抗平滑筋抗体、抗ミトコンドリア抗体や腹水の蛋白電気泳動などを行ったが慢性肝疾患の原因となるものはみつからなかった。

経頚静脈的肝生検を行ったが特に診断の手がかりとなるものはなかった。門脈圧は22mmHg,HVPG15mmHg(ref 5-10mmHg)とやはり上昇していた

 

問診しなおしてみると入院の6か月前から入院直前までVitAの摂取量は7000-1367000IUとかなり多かった。平均すると98500IU/dと摂取過多だった(入院の2週間前から体調が悪くなり100IU/dに減量したため最初の問診でスルーされていた

VitaminA中毒の症状について問診すると食思不振、乾燥肌、爪の脆弱、抜け毛があった

病理学的には類洞周囲の線維化とLipid-laden hepatic stellate cellの蓄積が観察される

Vitamin A中止しても腹水の改善がない場合は慢性肝不全として移植を検討しなければならない

ビタミンAはレチノールとして肝のStellate cellに貯蔵され、過剰症ではうっ血により肝類洞の閉塞をきたし門脈圧亢進症をきたす。さらにはHepatocyte injury,necrosisをきたす

ビタミンAの前駆物質としてはβカロチンがあり、過剰症では皮下に蓄積され柑皮症となる

非肝硬変性の門脈圧亢進症は
肝外・肝内の2つに分類される
肝外性は
肝前性に門脈や脾静脈の血栓症、AVMなどが原因となる
肝後性はBudd-Chiari syndrome、IVC閉塞、Restrictive cardiac diseaseなど

 

肝内はさらに前類洞・類洞・後類洞に分類する
肝内性の鑑別としては血管炎、HIV、薬剤など
非肝硬変性の門脈圧亢進症の原因としては住血吸虫症Schistosomiasisが最も多い

しかし住血吸虫症ではHVPGは正常範囲となり、腹水よりも静脈瘤出血が多い

塩化ビニルVincyl chloride,銅Copper,砒素arsenic、VitminA中毒は門脈圧亢進症の原因となる