頭蓋内圧低下症

先日、転倒後から頭痛が続くという患者さんを診療する機会あり、鑑別疾患に頭蓋内圧低下症が挙がりました。
全体像はボヤーッと知っていましたが人に教えることができるほどではなかったので調べてみました。

参考
The Journal of Headache and Pain (2017) 18:4
DOI 10.1186/s10194-016-0708-8
Pol J Radiol, 2017; 82: 842-849
DOI: 10.12659/PJR.904433
AJNR Am J Neuroradiol 33:690–4
doi: 10.3174/ajnr.A2849.

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髄液は頭蓋内に150mLほどあり、毎日500mL産生されるため3-4回入れ替わっている。
髄圧(初圧)CSF opening pressureは健常者では70-200mmH2Oが基準値で、BMIが大きいほど高くなる

 

頭蓋内圧低下症の有病率は10万人に2-5人で男女比は1:2-5
30-50歳代がピーク
Spontaneous CSF leakの機序は不明だが脊髄からの漏出が多いと考えられている。
80%の患者がMinor traumaを契機に発症
結合組織の異常がでるマルファン症候群、多発性嚢胞腎、エーラスダンロス、神経線維腫症、Lehman症候群などでは発症しやすいとされる。
女性に多いことから女性ホルモンが髄液のIntegrity(髄液を保つ)機能に関与している可能性が示唆されている。
低栄養、低身長などもリスクファクターの可能性がある。

 

 

臨床症状
CSF opening pressureの低下とorthostatic headachesが特徴。
Monro–Kellie仮説ではCSF圧低下により静脈拡張⇒髄膜の牽引と硬膜下浮腫、架橋静脈の断裂による血腫で痛みが出現するとされる。
orthostatic headacheは必ず出現するとは限らず、姿勢と関連しないという報告もある
性状も人によっては雷鳴様頭痛となることもあり頭痛の性状から診断するのは難しい。

頭痛
嘔気嘔吐
意識障害(一過性の脳ヘルニア)
頸部痛・後部硬直
視力の異常や複視
咳嗽時の頭痛
顔面痛や感覚鈍麻
耳鳴り
味覚変化
四肢の感覚障害
一過性の動眼神経麻痺
認知機能障害
パーキンソニズム
など症状は多様

診断
誤診率が高く注意が必要。
International Headache Societyの診断クライテリアでは
A:Bを満たす頭痛
B:頭痛が頭蓋内圧低下により引き起こされる
C:CSF opening pressure 60mmH2O未満、または画像上CSF流出の所見がある
D:その他の頭痛が否定的

起坐で増悪する頭痛の鑑別は
頭蓋内圧低下症
産後頭痛
静脈洞血栓症
硬膜下血腫

CTでは両側性の血腫や脳室の虚脱がみられる。しかしCTではMRIほど情報は得られない。

MRI
硬膜下の液体貯留、髄膜に造影効果、静脈系や下垂体の高信号などがみられる

 

脊髄MRI
髄液漏出に関してはCTミエログラフィーよりも有用性は低い。

ミエログラフィー
CTミエログラフィーCTMやガドリニウム造影ミエログラフィーは感度が非常に高い。
主にCTMが臨床では用いられ、通常のCTMとダイナミックCTMで漏出がどれほどかの判断もできる。しかし特異度は高くはない。

治療
経過観察で改善することが多い。
適切な飲水や安静姿勢保持で改善する。
薬物治療としてはカフェイン、テオフィリン、NSAIDs、また腹帯が有効との報告もある。
薬物治療で改善しない場合、硬膜外自家血注入療法epidural blood patch EBPを考慮する。
EBPで改善しなければ手術。

EBPは1960年にGormleyによってはじめておこなわれた。
50-100%の例で治療奏功するが、神経根障害などの有害事象がおきることもある。
注入する血液の量は明確な基準はなく2mLと少量から130mLと大量の報告もある。20mLくらいが奏効率高い模様。