性腺機能不全の鑑別

参考
N Engl J Med 2016;375:1567-79.
DOI: 10.1056/NEJMcpc1610098

 

20歳男性 女性化乳房gynecomastia

3年前から乳房腫大があり経過観察とされていた男性
4年前から口渇感と多飲と頻尿があり尿糖陰性で経過観察とされていた ここ最近でこの症状は改善した
ここ数年で霧視が出現するようになった
身体所見では女性化乳房の他に精巣が小さかった

 

鑑別
女性化乳房と精巣サイズの減少から性腺不全gonadal failureから鑑別

Primary
クラインフェルター症候群

Secondary
ライディッヒ細胞に対する刺激不足によるテストステロン産生の減少
GNRH・FSH・LHの阻害や減少

 

多飲尿からの鑑別
この患者では糖尿病Diabetes mellitusは除外されていたが尿崩症Diabetes inspidusは除外されていない
Vasopressinは視床下部にある傍室核paraventricularや視索上核supraoptic nucleiで産生され、下垂体茎を通って下垂体後葉に貯蔵される
よって視床下部-下垂体後葉までに障害があれば尿崩症が起こりうる

副腎や甲状腺ホルモンはADH拮抗作用(つまり水利尿作用)があるため下垂体後葉のみが障害される通常の尿崩症では多尿となるが、副腎・甲状腺ホルモンの欠乏があると拮抗作用の不足により自由水の保持に働き、あたかも多飲・多尿が改善したかのようになる これを仮面尿崩症masked diabetes inspidusと呼ぶ
仮面尿崩症では適切な飲水を行っていれば血漿浸透圧は正常範囲内であるが、この患者では血漿浸透圧334と高値であった
⇒仮面尿崩症に加えて無飲性尿崩症も併発していた

浸透圧を感知する細胞は視床下部の前方にあり、無飲性尿崩症は視床下部の前方に病変があることを示唆する
上記からこの患者では視床下部と下垂体(panhypopituitarism)の障害があることが考えられた
視野検査では両耳側下方のBlindあり
両側の視神経乳頭の蒼白あり
対光反射は消失していたが近見反射や輻輳反射は保たれていた  瞳孔不同があった

 

頭部MRIでは視床下部-下垂体に腫瘍性病変があった
鑑別については元文献参照

この患者は中枢神経原発胚細胞腫だった
中枢神経原発肺細胞腫瘍のワークアップは
• 頭部と脊髄のMRI
• 髄液AFP,hCG
分類としては播種しているか限局しているか

中枢神経腫瘍は症状出現してから診断されるまでおよそ7週間かかるとされている
胚細胞腫は化学療法と放射線療法の両方に感受性がある
化学療法単独での奏効率は80%だが、そのうちの半分は再発する
放射線療法では90%の患者が完治するが被爆の問題がある