意識障害 精神病の鑑別 ビタミンB12欠乏の鑑別

なんでもかんでもすぐに精神科疾患と考えてはいけません。
我々は精神科医ではないのでまず考えるべきは内科疾患です。
自験例ですが統合失調症と言われ続けていた神経梅毒を診断した経験があります。そのほかNMDA受容体関連脳炎も初期症状は統合失調症様というので有名です

参考
N Engl J Med 2019;380:665-74.
DOI: 10.1056/NEJMcpc1807495

48歳女性 妄想 右手の異常感覚

診断:悪性貧血

被害妄想のある48歳女性
受診の1時間前から右手に引っかかれる感じ、ひりひりする感覚が出現
受診時には症状改善しており神経学的異常をみとめなかった
ER受診後5時間で橈骨神経の支配領域に沿う異常感覚が再出現した

再度ER受診するも身体所見は変わらない

髪はぼさぼさで悪臭を伴っていた
意識は異常ないが被害妄想がみられた

尿のToxicologyは陰性
頭部CTも異常なし
右手のXpは異常なし

精神科医の診察でOrientationの異常あり(州と市を間違える)
Montreal Cognitive Assessment scoreは21点(26-30点が正常範囲)

特に基礎疾患の指摘はなかった

彼女は以前はNYの精神科病院のVolunteer clientだったが入院したり治療を受けたりはしていなかった
LOSでは特に有用な情報はなさそう

血液検査ではHb 10.0g/dLと貧血あり、MCV82.3fLだった

鑑別疾患
Primary Psychosis
被害妄想などSchizophreniaらしい症状はある
Schizoの診断には2つ以上の症状が6か月以上持続していることが必要
血中プロラクチン濃度は高値であり過去に精神科治療を受けていた可能性はある
患者の症状はManiaに該当がBipolar disorderという診断にはならない(睡眠時間の短縮や浪費活動などの病歴なし)

 

Secondary Psychosis


薬物使用
コカインやアンフェタミン、AWSでは2次性のPsychosisが起きうる

内分泌代謝疾患
甲状腺や副甲状腺疾患はPsychosisの表現型をもつが検査結果から否定的
肝酵素軽度上昇ありWilson diseaseの表現型の可能性はあるが年齢から否定的

譫妄

感染症
Alterd mental statusの鑑別として感染症は考慮される
CSFでNeurosyphilisを除外する必要があり、HIVも調べておく必要がある

神経変性疾患
Dementiaの鑑別としてHuntington’s diseaseでもPcychosisは起こるが通常はChoreaが先

炎症性疾患
SLEもPsychosisをきたすが診断基準満たさず
MSもRare presentationだがPsychosisをきたす MRIで異常なし
辺縁系脳炎ではPsychosis症状出現するがMRIで否定的

神経疾患
CTとMRIで占拠性病変やStrokeは否定できた
てんかん発作では迅速にプロラクチン上昇をきたす
Psychosisと関連のある癲癇はIctal psychosis,Postictal psychosis,Interictal psychosis
病歴からは癲癇のおそれは低いがEEG検査は考慮される

栄養障害
様々なビタミン欠乏がNeuropsychiatric manifestationをきたす
ビタミンB12欠乏がこの患者では疑わしい
Psychosisのほか、Paresthasiaや大球性貧血をきたす。この患者ではMCVは正常範囲内であったがRDW高値やLD上昇や軽度の白血球減少は悪性貧血Pernicious Anemiaに合致する所見だった

 

血液検査では葉酸は正常範囲、B12は著明低値でホモシステインやメチルマロン酸は高値だったためPernicious anemiaの診断となった
葉酸は代謝にメチルマロン酸を必要としないためメチルマロン酸は高値とならない
この患者ではさらに内因子抗体Intrinsic factor antibody陽性であった
内因子抗体は感度は高くないものの高い特異度をもつ
Penicious anemiaではしばしば溶血によりLD高値やI-Bil上昇がみられる
この患者ではフェリチン16mcg/Lと鉄欠乏性貧血の合併もあったためMCV高値とならなかった

 

悪性貧血Pernicious anemia
栄養障害⇒ベジタリアンや貧困によるほぼベジタリアンな状態
吸収不良⇒コバラミンの摂取は足りているが慢性的に胃の萎縮がある状態や胃酸欠乏はコバラミン欠乏の高齢者の30-50%でみられる
胃酸や内因子の分泌欠乏⇒胃全摘後2-10年でVitB12欠乏をきたす 胃部分切除や長期間H2blockerやPPI内服により胃酸欠乏や腸内細菌のOvergrowthによるB12消費亢進がおきる
悪性貧血では自己免疫性胃炎も原因となる
その他にも膵機能不全、小腸でのBacterial overgrowth,Tapeworm,回腸遠位部での内因子受容体の異常や回腸切除でも吸収不良がおきる
アルコールやPPIは葉酸欠乏となる

Clinical manifestation
Macrocytic anemia,Pancytopenia
Cardiopulmonary(secondary to anemia)
Gastrointestinal
Dermatologic(色素沈着など)
Sterility不妊
Psychiatric symptom
Neurologic(広範囲の脱髄により中枢性、脊髄性の異常をきたす)