COPD患者への高濃度酸素投与で高CO2血症を増悪させる理由①

最初に結論を書きます。

•高濃度酸素投与による分時換気量低下

高濃度酸素による肺胞死腔の増加

•PaO2上昇によるHb-CO2親和性低下(ホールデン効果)

が重症肺疾患患者の高CO2血症を増悪させると考えられる。

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国家試験でも頻出ですが、慢性の高CO2血症(慢性閉塞性肺疾患など)の患者に高濃度酸素を投与すると高CO2血症が増悪するといわれています。

私が学生のときは慢性的にCO2が高い患者ではCO2は換気刺激として弱くなり、O2が換気刺激となるため、高濃度酸素投与により呼吸回数が減少し高CO2血症が増悪すると教わりました。

この理論は一部合っていますが間違っている部分もあります。

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まずは呼吸中枢についてお話します

呼吸中枢は橋~延髄に存在し

1.呼吸調節中枢

2.腹側呼吸ニューロン

3.背側呼吸ニューロン

の3つに分けられます。

脳梗塞で脳幹部が障害される場合、梗塞巣により呼吸パターンは異なります。

 

O2は中枢に対しては直接の作用はなく頸動脈・大動脈小体に作用し、呼吸調節に必要な神経信号が伝わります。

 

H+は延髄腹側の化学感受領野に作用し呼吸中枢を興奮させます

CO2はH+を介して間接的に作用します

CO2はBBBの透過性をもち、延髄の間質と脳脊髄液中CO2を増加させ

H2O+CO2⇒HCO3-  + H+

上記のようにCO2の増加は急性期には呼吸中枢を強く刺激させます。

Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology 13TH EDITION

しかし1-2日後には適応がおき刺激作用は初期効果の1/5まで低下します

PaCO2高値の患者では頻呼吸なら急性の経過、呼吸数増加がみられなければ慢性の経過と考えましょう

こういった機序から

  • 慢性の重症肺疾患の患者ではHCO3-増加によりpH低下を感知する末梢化学受容器・中枢化学受容器・呼吸中枢による呼吸ドライブが減少する
  • 通常、PO2が相当低下しないと換気応答は生じないが、このような患者では低酸素血症が主たる換気刺激となっている。
  • このような患者に低酸素血症を改善するために高濃度酸素を投与すると換気が抑制される

と教わることが多いです。

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しかしこの呼吸抑制だけでは高CO2血症が増悪する理由にはなりません。

このことは1980年代にすでに証明されています。

慢性閉塞性肺疾患患者の急性呼吸不全における酸素投与が換気と血液ガスに与える効果
Effects of the Administration of O2 on Ventilation and Blood Gases in Patients with Chronic Obstructive Pulmonary Disease During Acute Respiratory Failure
Am Rev Respir Dis 1980, 122:747-754.

COPDの急性増悪で気管挿管されFiO2 1.0で換気を行うと対照群と比較し

早期に分時換気量が18%低下する(1回換気量、呼吸回数ともに減少)

しかし15分も経過すると徐々に分時換気量は増加していき対照群の93±6%まで改善した。

分時換気量が改善しているにも関わらずPaCO2は増加していった

Am Rev Respir Dis 1980, 122:747-754.

この文献以外にも換気量とCO2増加が相関しないという文献は数多くあります。

 

ではなぜ換気量が改善しているにも関わらず高CO2血症が増加するのでしょうか?

②へ続く…