D-dimerのピットフォール

ポイント

・D-dimerは診断の除外に用いる検査である

・D-dimerを測定する意義のある疾患は現在のところ大動脈解離と肺塞栓・深部静脈血栓症のみである。鑑別に上記疾患が含まれない場合は測定しないほうがベターなこともしばしば。

・カットオフは0.5mcg/mLまたは年齢×0.01mcg/mL

・特異度は50-60%程度なので“値が高いから肺塞栓ぽい”など診断目的の測定は✖。あくまで除外の目的に使用する。

・各検査の感度・特異度を使うときはその元になった研究も考慮する。その研究の対象患者はそもそも想定される疾患の事前確率が高いことがほとんど

大動脈解離ではADD-RS、肺塞栓ではWell‘s Criteriaや(入院患者なら)Geneva scoreなどの診断ツールも併用すると見逃しが減る。

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外勤先の研修医より診療した患者の相談を受けました。

44歳男性で朝5時に心窩部痛・上背部痛で救急要請し、単純CTは明らかな異常なくD-dimer 1.4mcg/mLで異常値ではあるけどそれほど高くないため明らかな異常なしとの判断で内科外来に行ってもらったら大動脈解離だったという症例です。

 

詳細な病歴は割愛しましたが病歴は典型的な大動脈解離でした。

今回D-dimerが“そこまで高くない”というところで大動脈解離を鑑別から外してしまったそうです。

 

血栓のできる疾患(大動脈解離、肺塞栓、深部静脈血栓症)でのD-dimerの研究は以下のものが有名です。

Diagnostic accuracy of D-dimer test for exclusion of venous thromboembolism: a systematic review

J Thromb Haemost. 2007 Feb;5(2):296-304.

システマティックレビューの対象となった研究では平均年齢が60歳未満の研究が40%、60歳以上が32%、残りは平均年齢不明と比較的若い患者が対象となっています。

感度は概ね94%程度(ELISA , ELFAなど検査の方法により異なる)

特異度は50%程度です。

 

 

D-dimer as a Biomarker for Acute Aortic Dissection

A Systematic Review and Meta-analysis

Medicine (Baltimore). 2015 Jan;94(4):e471.

この大動脈解離に対するシステマティックレビューでは平均年齢はなんと30.4歳(海外だとMarfan syndromeがそこそこいるからでしょうか?)

感度94.5% , 特異度69.1%

 

 

Systematic Review of Aortic Dissection Detection Risk Score Plus D-dimer for Diagnostic Rule-out Of Suspected Acute Aortic Syndromes

ACADEMIC EMERGENCY MEDICINE 2020;27:1013–1027.

このシステマティックレビューでは平均年齢は64歳

ADD-RSという大動脈解離を疑う際に点数をつけるクライテリア(最大3点)では

・いきなり造影CTを撮影(2点以上)

・D-dimerを測定して0.5mcg/mL以上なら造影CT(0-1点)

の判断に使える。

 

このスコアとD-dimerの値を組み合わせると

ADD-RS 0点 かつD-dimer 0.5mcg/mL未満は感度99.9%

ADD-RS 1点 かつD-dimer 0.5mcg/dL未満は感度98.9%

でした。

D-dimerを年齢補正で考える場合は年齢×0.01mcg/mLが基準と言われています。

 

 

そもそもこういった研究はD-dimerを測定する意義のある疾患が疑われる事前確率が高い患者を対象としています。

普段特に意識せずD-dimerをオーダーする人もいると思いますが、検査は事前確率あってのものなので、疑われる場合はスコアリングができる疾患である場合は自分で事前確率を判断できない場合はスコアリングを利用するのも一つの手でしょう。

たとえば大動脈解離が疑われる場合には前述のADD-RSを用いるとよいでしょう。

 

 

日常診療で大動脈解離や肺塞栓以外の疾患でD-dimerを測定してしまっている人はD-dimerの数値の基準値が上がっている可能性があります。例えば骨折では100mcg/mL以上になることもしばしば。基準値を誤解しないためにもD-dimerの測定は大動脈解離やVTEを疑う場合のみにしておきましょう。