Wernicke脳症の診断におけるビタミンB1(チアミン)の信頼性は?

ポイント

数値は参考 病歴が大事

ビタミンB1として血液検査で測定されるのは生体内のチアミンのうち10数%。組織での値を反映していない

ビタミンB1をもとにしたWernicke脳症の診断は1割が偽陰性となるおそれあり。カットオフ値を定めるのは難しい。

 

チアミンが脳に届くまで4つの過程があり

  1. 小腸のBrush borderでの吸収⇒Enterocyteへ
  2. Enterocyteから血流へ
  3. 血流から心臓や肝臓への輸送
  4. BBBを通過してCSFに入り神経に取り込まれる

 

この過程では数種類の輸送タンパクが関わる

濃度が濃いと拡散により吸収されるが通常の食事だとほぼ能動的な働きで吸収される。BBB通過にも受動的拡散が関わる。

アルコールは小腸での能動的な輸送システムを阻害するため吸収不良となる。

またアルコールによる利尿で水溶性ビタミンであるチアミンは喪失してしまう。

アルコールはチアミンのリン酸化も阻害する。

 

チアミンは生体内で以下の状態で存在

Free thiamine(T) 10%

2リン酸エステル(TDP) 80%

3リン酸エステル(TTP) 少量

1リン酸エステル(TMP) 少量

血液検査で測定されるチアミンはTとTMPのみ

 

基準値以下でWernicke脳症を示唆する症候があればまず間違いないが、基準値内(24~66(ng/mL))でもWernicke脳症が疑われる場合はWernicke脳症として治療するのがベター。Wernicke脳症は8-9割が見逃される疾患である

 

チアミン欠乏による脳へのダメージは複数の要因があり個人差が大きいためカットオフは定めるのが難しい

J Basic Clin Physiol Pharmacol. 2018 Oct 2;30(2):153-162.

 

チアミンやリン酸化チアミン値はWernicke脳症の診断において感度84.1%、特異度85.4%、陽性的中立82.4%、陰性的中率88.0%

Alcohol Alcohol. Mar-Apr 2009;44(2):177-82.

 

Goldman-cecil MedicineからWernicke encephalopathyについて

Low thiamine levels (<50 mg/mL) are common, although levels may be normal in about 10% of cases.

参考文献不明

 

チアミン投与して神経症状が改善するのが最もよい診断ストラテジーだとする文献も多数