ヘパリン抵抗性

今週のNEJMに非常に興味深いReviewがありました。
私は現在ICU勤務なのでDVT治療や予防にヘパリンを使用しますがたまにすごく効きづらい患者がいます。

ヘパリン抵抗性
N Engl J Med 2021;385:826-32.
DOI: 10.1056/NEJMra2104091

 

ヘパリンはアンチトロンビンⅢ(以下ATⅢ)と結合し、ATⅢ活性を1000-4000倍ほどに高めることで抗凝固作用を発揮する。
未分画ヘパリンunfractionated heparin(以下UFH)は薬効に大きな個人差あり、低分子ヘパリンと比較し半減期が短い、プロタミンでリバースできるなどのメリットからECMO使用者など凝固の慎重な管理が必要な場合に選択される

ヘパリン抵抗性は抗凝固作用を得られるのに高用量のヘパリンが必要な場合をいうが、明確な定義や基準値はない。
ある文献では
・抗凝固に35000U/dayが必要
・ACT 400-480secを達成するのに500U/kg必要
と定義している。

ヘパリンが有効に働いているかを評価するのに
Activated Partial-Thromboplastin Time APTT
Activated Clotting Time ACT
の2種類の検査項目がある
APTTはヘパリンが0.2-0.8 IU/mL(薬効を表す単位)のときに有用で
ACTは1.0-5.0 IU/mLのときに有効な指標
要するに高用量のヘパリン使用時はACTでモニター、低用量のときはAPTTでモニターする
ACTは主に透析時やECMO時に用いる

ヘパリン抵抗性の機序
非特異的バインド
ヘパリンは陰性電荷をもち、血小板因子4・高ヒスチジングリコプロテイン・リポプロテイン・von Willebrand因子・フィブリノーゲン・単核球・血管内皮細胞・成長ホルモンなどなどと結合してしまう。
UFHはポリマーが長く結合しやすいので患者因子により個人差が大きい

アンチトロンビン欠乏
ヘパリンはATⅢに結合し薬効を発揮するのでアンチトロンビンの欠乏時は抗凝固作用が弱くなる。肝疾患・敗血症・DIC・白血病に対するアスパラギナーゼ使用・ECMO使用などがAT欠乏をきたす疾患の例。
AT補充によりACTが改善しヘパリン投与量を減らすことができる。

血小板相互作用
ヘパリンは血小板因子4と結合し、一過性の血小板減少をきたすことがある。
これがさらに抗体と反応することでヘパリン起因性血小板減少heparin-induced thrombocytopenia HITをきたす。

凝固因子増加
COVID-19患者や一部の急性炎症状態の患者では凝固因子増加によるAPTT短縮がみられヘパリン抵抗性を示す

Andexanet Alfa
第Ⅹa因子阻害薬の拮抗薬。第Ⅹa因子阻害薬を特異的に標的としデコイとして働く。Ⅹa阻害薬のほか、低分子ヘパリンやUFHにたいしても拮抗する

COVID-19
COVID-19患者は透析やECMO時に通常より高用量のUFHを要する
治療
ヘパリン抵抗性があり、ATが低値の場合は理論的にはATの補充により改善するが臨床的なベネフィットを示した研究は限局的。

直接トロンビン阻害薬(アルガトロバンやビヴァリルヂン)はHITの患者でも使用される。
AT3の欠乏や欠損がある患者ではそもそもヘパリンの薬効が弱いため直接トロンビン阻害薬での抗凝固が望ましい。