44歳男性 6か月続く体重減少、腹痛、下痢

慢性の下痢症では寄生虫症を考える

糞線虫症と診断したら、症状が激しい場合はHTLV-1のチェックを考慮する

 

N Engl J Med 2020;382:365-74.
DOI: 10.1056/NEJMcpc1913473

44歳男性 体重減少 下痢 腹痛
診断:HTLV-1感染症に合併した糞線虫症

入院の6か月前から嘔気と食思不振が出現し体重が9㎏減少
入院の1か月前に頸部痛、羞明、眼窩後部痛あり各種検査から髄膜炎(好中球有意の細胞数増多あり、糖低下なし)と診断され抗菌薬・抗ウイルス薬で治療されたが培養やHSV-1,2陰性で治療終了となった。
退院後から心窩部痛と嘔気嘔吐、下痢が出現するようになりさらに体重は14㎏減少

HIV、梅毒、CD抗原は陰性
血液ピロリは陽性だが便ピロリは陰性

便カルプロテクチンは上昇、好酸球は1500近い値
CTでは小腸に造影効果あり、腸管膜リンパ節腫大がみられた。

患者はカリブ海出身で受診の4か月前に帰省歴あり

 

鑑別
悪性腫瘍
消化管は節外リンパ腫の好発部位。
消化管リンパ腫の75%は胃から発生し、小腸は10%未満
しかし中東や地中海では小腸原発リンパ腫が大部分を占めている
enteropathy-associated T-cell lymphoma(associated with celiac disease)
Burkitt’s lymphoma
B-cell lymphomas other than immunoproliferative small intestinal disease

 

自己免疫性疾患
セリアック病
この患者は組織トランスグルタミナーゼIgAテストは陰性だがIgA欠損症の否定をしていない。IgAが低値の場合、トランスグルタミナーゼIgGテストを行うべき
ただし腸管膜リンパ節腫大や髄膜炎はセリアックとは合わない

自己免疫性消化管症Autoimmune enteropathy
antienterocyte or anti–goblet-cell antibodiesの存在がこの疾患を示唆する。
また生検も有効 消化管外症状も出現するが神経症状はでない

好酸球性腸炎
80%の患者は末梢血好酸球増多がみられる。診断は生検

 

感染症
HIV関連感染症の多くが慢性下痢症や体重減少をきたす
MAC症の消化管症状には腸管膜リンパ節腫大も含まれる
しかしこの患者はHIV陰性であるため日和見感染症は否定的

Whipple’s disease
Tropheryma whipplei感染症は慢性の腹痛・下痢・吸収不良や関節痛をきたす。
消化管外症状は発熱、リンパ節腫脹、中枢神経症状(認知症、小脳失調など)
Whipple病の診断はperiodic acid–Schiff staining of a small-bowel biopsy specimen specimen, which would show foamy macrophages in the lamina propria of the gut
電子顕微鏡か血液PCRで診断も可能

Tropical sprue
熱帯地方でみられる吸収不良症候群でセリアックとの鑑別が必要。環境関連胃腸症のひとつ。葉酸欠乏とB12欠乏による大球性貧血が特徴

寄生虫症
ジアルジア

Strongyloidiasis
糞線虫症による髄膜炎は好中球有意の培養陰性の髄膜炎の表現型をとる
肺ではLöffler syndromeという肺好酸球症がおこる
症状は患者の細胞性免疫に依存するため通常ではこの患者のような激しい症状は出現しない。HTLV-1感染症が糞線虫症のリスクと重症度を高める