多発する塞栓症の鑑別

悪性腫瘍に伴う血栓症をTrousseau症候群と呼びますが、主に腺癌で起こるものです。病理が大事。トルソーに関するこの話が好きでよく研修医に話しています

”1865年、フランスの内科医アルマン・トルーソーは、胃癌患者の遊走性血栓性静脈炎を初報告し、担癌患者で血栓性静脈炎・静脈血栓症が高率に発生すると述べた。トルーソーはその直後に自分の下肢にもこの徴候を見つけ、胃癌と診断されて1867年に没している。”

 

 

N Engl J Med 2018;379:1658-69.
DOI: 10.1056/NEJMcpc1802830

57歳男性 混乱 発熱 体重減少

診断:肺腺癌に伴う非細菌性血栓性心内膜炎Nonbacterial thrombotic Endocarditis(NBTE)

 

受診の7週前から食思不振や倦怠感が出現 4週後に乾性咳嗽と微熱が出現した

胸部CTで左肺にConsolidationをみとめCefdinirとAzithromycinで治療され、翌日よりLevofloxacinで6日間治療され退院となった

退院の翌日より咳嗽が再度出現し別の病院を受診 Piperacillin-tazobactam+VCMで治療開始された
Amoxicillin-clavulanic acidにDe-escalationされ退院し10日間の治療を行った

発熱などの症状が退院後も持続
徐々に状態が悪化したため気管挿管され転院搬送となった

精査すると
肺塞栓、肺梗塞、脾梗塞、腎梗塞、脳梗塞などの多発梗塞病変が見つかった

 

鑑別
多発する塞栓症から

Paradoxical Emboli
卵円孔開存やPFOなどが原因で静脈血栓症がシャントを通って静脈を飛ぶもの
バブリングした生理食塩水を注入すると数秒でLA,LVに観察される
Valsalva maneuverや陽圧換気もR⇒Lシャントを分かりやすくさせる

 

APS
血栓症、血小板減少、Livedo reticulitis、塞栓症などの症状がでる
感染症患者では時に偽陽性となる(変動する)
APSではMicroemboliとなり、このケースのようにMacroemboliになる点が合わない

 

Heparin induced thrombocytopenia
HITはPlatelet Factor 4とヘパリンに対する自己抗体が産生され起こる疾患である
入院患者では常に考えるべきだがこの患者は経過が合わない

 

Mural thrombi associated with Cardiomyopathy
左室機能低下患者の5-8%でみられるが疾患概念があまり理解されていないため正診率が低い
EFが30%程度まで低下していると起こりうる
心エコーの感度は低く(23%)、心MRIは88%と高い

 

Atrial Myxoma
発熱と全身性の塞栓症が症状

 

Rheumatic fever
急性期の症状は弁膜炎、心炎(心外膜炎)、中枢神経系

Culture negative IE
IEのうち2-30%が培養陰性心内膜炎となる

 

Nonbacterial thrombotic Endocarditis(NBTE)
進行癌の患者でみられる疾患でありMarantic endocarditisと呼ばれる
SLEでもみられLibman-Sacks endocarditisとよばれる
その他には結核や尿毒症、AIDsでみられることがある
病理解剖では0.9-1.6%程度で観察される
病理でみとめる症例の50%は肺腺癌、卵巣がんであり、25%は血液悪性腫瘍である

とある研究では200人の悪性腫瘍持ち患者で血栓塞栓の徴候がない患者をしらべるとVegitationga19%の患者でみられた(Controlは2%)
NBTEのVegitationはとびやすく、右心系にできることは稀

通常のIEはSinglelesionになることがほとんどだがNBTEはMultiple,wide lesionになるやすい

この患者はNBTEと考えられ精査の結果肺腺癌がみつかった