圧反射障害 Baroreflex dysfunction

めちゃくちゃ面白かったです。
失神の鑑別、自律神経障害の鑑別に

求心性 or 遠心性

遠心性なら 節前性 or 節後性

という鑑別が必要ですね

 

N Engl J Med 2020;382:163-78.
DOI: 10.1056/NEJMra1509723

 

自律神経は血管平滑筋・細動脈・静脈・血管周皮細胞に分布しており平滑筋緊張や血管径を調節する。求心性の感覚ニューロンの化学・物理的な変化を受けて、圧反射により心臓や血管の調整をすることで各臓器の血流を調整する。

圧受容体は大血管や静脈に分布し血流の調整をする。
圧が上がれば圧受容体は遠心性の骨格筋・腎血管・内臓神経の交感神経を抑制し、血管拡張に働く。また副交感神経を介し、洞房結節の心拍数を遅くする

立位になれば圧がかからず血管収縮と心拍数増加がおこる。

求心性圧反射の機能不全
自律神経障害を疑う場合は膀胱・消化管・性機能(勃起障害)の障害があるかを確認する

圧反射のみの障害の場合、求心性の舌咽神経・迷走神経障害を考える

発作性の交感神経過活動は重症な脳損傷でみられ、高血圧・発汗・頻脈をきたす。

 

遠心性の圧反射障害
典型的には臥位⇒座位で3分以内に20/10mmHgの血圧低下がおこる。
臥位での高血圧は遠心性の圧反射障害の患者のうち半数でみられる。また夜間に正常な血圧低下Dippingが起こらないため、夜間に腎からNa ,waterの喪失がおき(Pressure natriuresis)、起床時に起立性低血圧が増悪する。

節前線維性 vs 節後線維性
節後線維性は神経-血管でのNAdの放出障害で圧反射障害がおこる。
節前線維性は臥位での血漿NAdレベルが低値。
症状に差はない。

節後線維性ではNAdの放出障害を代償するためにカテコラミンレセプターが増加すると考えられており、アドレナリン作動性物質投与によりアドレナリン作用の過活動が起こる

NAd再取り込み阻害薬で著明に神経-血管間隙でNAdレベルが上昇し血圧上昇をきたすのが節前線維性

 

原因
遠心性の圧反射障害が最もみられるのがDM。次点でSynucleinopathy。
Synucleinopathyにはpure autonomic failure, Parkinson’s disease,
dementia with Lewy bodies, multiple-system atrophyがある。
PDとDLBは節後線維性のSynucleinopathyで、MSAは節前線維性と考えられている。

 

求心性の圧反射障害
求心性の圧反射障害は、圧感知の交感神経が制御されないため、神経-血管間隙でNAdが過剰に分泌され血管収縮・頻脈・血圧上昇が起こる。
症状は頭痛やめまい、そわそわ感など。起立性低血圧がでることもあるが、遠心性圧反射障害と異なり出現しないこともある

求心性圧反射障害の原因となるのは迷走神経の障害(頚部悪性腫瘍に対する手術・放射線)、頸動脈狭窄症の術後など。
Guillain–Barré syndromeでも求心性圧反射障害がおこる。GBSでの圧反射障害は血圧の変動が激しいのにHRの変動があまりない。
家族性自律神経障害はRiley–Day syndrome

迷走神経反射性失神 Vasovagal syncope
どの年齢帯にもおこり、相応のOrthostatic stressがかかると健常人でも75%が失神をおこす。迷走神経反応は心理的・感覚的・血行動態刺激によって誘発される(代表的なのは血を見る、内視鏡中に、痛み、暖かい環境で長時間立位姿勢、脱水など)
利尿薬・血管拡張薬・アルコール・マリファナ・αブロッカーは迷走神経反射を誘発しやすくする。
失神前に遠心性の交感神経活動により血管収縮がおこり、顔面蒼白・発汗・立毛Piloerection・嘔気・胃部不快感がおこる。これらのサインは遠心性の圧反射障害では出現しないため問診が大事。

 

起立時頻脈症候群 Postural tachycardia syndrome
立位で血圧低下はないものの頻脈になる。また、交感神経症状(動悸・胸痛・息切れ・不安)も出現する。
有病率は若い白人女性で多い。機序は明らかでないが心萎縮・EABV低下・心臓のNAd輸送体などが関連しているとされる。エーラスダンロス患者に多い。
Postural tachycardia syndromeは臥位⇒立位になって10分以内に30bpm以上の上昇がみられ、明らかな原因がない場合に診断される。不適切な頻脈というのが診断のカギであり、安静時でもHR 100bpmを超えることも手掛かりとなる。

治療
圧反射障害の治療は病変がどこにあるかを考えるのが大事!
Midodrine:遠心性障害に有効。α1受容体アゴニストであり末梢血管収縮を起こす。HR上昇は起こらない。BBBは通貨しない。臥位での高血圧と尿閉に注意。
Droxidopa:遠心性障害に有効。NAdに変換される。頭痛や臥位での高血圧に注意。
Fludrocortisone:Naと自由水の再吸収により内服開始から3-5日で血圧上昇。

などなど、圧反射障害に対する薬剤は色々あるため元文献をお読みください