治療抵抗性の高血圧症の鑑別

参考
N Engl J Med 2018;378:2322-33.
DOI: 10.1056/NEJMcpc1802825

 

45歳女性 高血圧 倦怠感 意識変容
診断:クッシング症候群

特に基礎疾患を指摘されていない45歳の女性
今回の受診の18か月前に家庭医受診したときに血圧高値を指摘され、高血圧の原因に関して腎動脈・TSH・血漿フリーカテコラミン・メタネフリン・アルドステロンを測定され、心エコーまで施行されたが明らかな原因はなくリシノプリルを処方され血圧高値は改善
受診の4週間前に下腿腫脹・腹痛・労作時呼吸困難・進行する倦怠感を主訴にED受診。体重は前月に比較し4.5㎏も増加していた。また時々混乱症状があった。

血圧は180/110mmHgと著明高値で下腿に非圧痕性浮腫が出現していた。心エコーではEF75%と過剰活動あり。βブロッカーなどを処方され退院となった。

その後も混乱症状などが増悪するためED再受診となった。肺塞栓症があり入院となった。
家族歴では母と姉妹に血栓症と流産の既往があった

 

 

鑑別
重度の高血圧症(治療抵抗性の高血圧症)から鑑別行った

この患者は降圧薬は3剤併用して治療するほどの高血圧症であり、さらに低カリウム血症を合併していた。
高血圧症の原因としてSAS、大動脈縮窄、腎血管病変、甲状腺疾患、褐色細胞腫などが挙がるが病歴から否定的だった。

低K血症を合併する高血圧症としては原発性アルドステロン症クッシング症候群が重要である
クッシング症候群は高血圧症の原因の1%未満である

原発性アルドステロン症のうち20%は治療抵抗性である
原発性アルドステロン症では高血圧症・低カリウム血症・代謝性アルカローシスが出現する

18か月前の高血圧症の際にアルドステロンは測定しているが、原発性アルドステロン症を疑う際はレニン活性を測定しARR( aldosterone-to-renin ratio)を計算する必要がある
高血圧症・低カリウム血症・代謝性アルカローシスは腎のミネラルコルチコイドレセプターがアルドステロンにより起動されるため生じる

そのためミネラルコルチコイド過剰でも同様の症状が起きうる
クッシング症候群ではコルチコイド過多になるため白血球増多(リンパ球減少)、高血糖、意識変容、不安、いらいら、近位筋の筋力低下などがおこる。
またクッシング症候群はVTEとの関連が示唆されておりそのリスクは一般人口の10倍程度である
クッシング症候群では高血圧が存在していなくても心筋肥大をきたすためコルチコイドが心筋に作用するのではないかと言われている

また、クッシング症候群ではアンドロゲンレセプターもActivationするため多毛や脱毛(Alopecia)が起こる
クッシング症候群の中でもACTH異常によるものは全体の20%程度である

この患者ではピル内服終了後から今回の症状が出現しているため副腎過形成がおきた可能性あり(LH-絨毛性ゴナドトロピン過剰により副腎の上記ホルモンレセプターが刺激され過形成がおこる)

異所性ACTH産生腫瘍はネガティブフィードバックがかからないため他のクッシング症候群に比較して重症になりがち
ACTH高値⇒血漿コルチゾル高値⇒尿中コルチゾル高値で、より代謝性アルカローシスやコルチゾル過多や血栓イベントがおきやすい。

クッシング症候群の診断は尿中コルチゾル測定である。

 

この患者ではACTHを測定すると異常高値であった。
ACTH産生腫瘍を疑う場合、その場所の同定をしなければいけない。まず頭部MRIを撮影したが異常なし。微小腺腫ではクッシング症候群の原因となりにくいがMRIでは診断困難であり、下錐体静脈洞の静脈サンプリングを行うしかない。

頭部MRIの次は腹部MRIを撮影したが異常なし。PETを撮影し全縦隔に取り込みあり、腫瘍と考えられた。周術期にコルチゾル補充療法を行い外科的切除を行うと高血圧症などは改善した。