心筋症の鑑別 コバルト心筋症

参考
N Engl J Med 2014;370:559-66.
DOI: 10.1056/NEJMcps1213196

 

59歳女性 原因不明の心筋症で心臓移植、移植心も心筋症となった

診断:コバルトによる心筋症

かかりつけ医に2週間前からの咳嗽、労作時呼吸困難、下腿浮腫で受診
陰性ROS:鼻汁、咽頭痛、発熱、発疹、下痢、新たな関節症状(もともと多発関節炎でミノサイクリンとメロキシカムが処方されている、4年前に右股関節置換を行っており、3年前に左股関節置換、1年前に左ひざ関節置換)
肺炎と”travel-related edema”の診断で抗菌薬投与が行われた(CXPも撮影していないし血液検査も行っていない)

翌週に呼吸困難、浮腫、倦怠感が増悪
心拡大Cardiomegalyが出現していたがPEはCTからは否定的だった
JVDあり 呼吸音は異常なし S3が聴取され全収縮期雑音が聴取された
血液検査は特記事項なし
ECG異常なし
TTEではEF 25%と低下しており全周性にHypokinesis、左室壁0.9cmと菲薄化、中等度の心嚢水あり
CAGでは冠動脈異常なし
フロセミド、カルベジロール、リシノプリルで治療開始した

少しの改善はみせたものの2か月後に呼吸困難の増悪ありフロセミドを増量された。SBP80-90mmHgと低値のため増量しづらかった。
6か月後には労作時呼吸困難が強くなり入院。心嚢水はさらに増加していた
右心カテでは中心静脈圧、肺動脈圧ともに上昇していた
心嚢水は穿刺し440ml引けた⇒悪性細胞やG染色、培養では菌みとめず

通常、これだけの心嚢水貯留はHFの患者ではUncommonなため心膜炎や自己免疫性の心筋症などが鑑別に挙がる

結局あまりよくならず心臓移植の方針となった

心臓移植にListedされてから3か月後にCardiogenic shockで来院
心筋生検ではmyocyteの肥大化と間質の線維化あり アミロイドーシスやヘモクロマトーシス、心筋炎はみとめず
電子顕微鏡でミトコンドリアの形態異常(Enlarged,atypical form)あり

 

心臓移植を行い20日目に退院(プレドニゾン、タクロリムス、ミコフェノレートモフェチル内服)
2か月後には元気になっておた

Routine testingでTSH 58mU/L(ref 0.5-5.0) と高値でFree T4低値であった
アミオダロンによる甲状腺機能低下症が考えられた
アミオダロン投与患者のうち10-20%で甲状腺機能低下症がおこるが薬剤中止しているにも関わらず甲状腺機能低下症があるのは典型的ではなかった
また白内障が出現していたがプレドニゾンによるものと思われた

心臓移植をうける13か月前にこの患者に留置されている人工関節のRecallがあった(安定しないから?higher than expected failure rates)
移植から7か月後の検査では人工関節が溶けている所見(Metallosis)あり、血中コバルト濃度は287.6mcg/L(ref <1.0)だった!
心臓の切片をもう一度観察するとCardiomyopathy related to cobalt-chromium toxicityの所見だった

移植後にも心機能悪化あったがRejectionの所見なし
人工関節を入れ替えると心機能は改善してきたため移植後心もCobalt toxicityがあったと思われた

多くの重金属はミトコンドリア障害を来す
心筋以外だと甲状腺、肝臓、神経、骨髄などがCobalt toxicityで障害を受けるとされている
この患者では甲状腺機能低下症や白内障がCobalt toxicityと関連があったと思われる

Cobalt cardiac toxicityは1960年代に”Quebec beer-drinkers’ cardiomyopathy”として報告された。経過は今回の症例と似ており若年者で急速に進行する心筋症のパターンをとる
近年では人工関節関連でCobalt toxicityがおきた報告がいくつかある
人工関節を抜去すると心筋症は改善するとされる
どれくらいの血中濃度で中毒症状が出現するかなどは明らかでない